SLA~コストに見合った策定を~
SLAとはService Level Agreementの略で、依頼者と提供者の間で合意したサービスのレベル(定義、範囲、内容、達成目標等)を定義するものです。
IT・WEBのサポート業務においても、よく締結される書類です。
契約内容によって記載範囲、粒度、具体性などは様々です。
下記に具体的な例を挙げます。
- サポート対象範囲:
システム全体のうち、アプリケーションはサポート対象とするがインフラ(ハードウェア)やネットワークはサポート対象外 - レスポンス:
エンドユーザから何らかの問い合わせや障害連絡が発生した場合、二十四時間以内にクライアント、エンドユーザ、インシデント管理者に第一報を入れる。その後、二十四時間以内にファーストアクションを起こす - 対応時間:
メールは24時間受付(月に一度のメンテナンスを除く)
電話、チャット、現地訪問の受付は祝日を除く平日の09:00~18:00
SLAを守るために必要な体制とその持続
このSLAを守るためにはコストがかかることも多々あります。
ハイレベルな要求のあるサービスサポート契約では、代金が高くなっても厳しいSLAを求めるお客様もいらっしゃいます。
サービスを提供する側は、サービス運営の仕組みを作ったり、システムや機械を導入したりして効率化を図らなくては実現できない要求であることも多々あります。
具体的な施策をみてみましょう。
運営体制の構築
長期間や24時間対応、365日稼働システムのサポートには複数のメンバーで構成されるチームであたることが一般的です。
勤務シフトを組んで運用中の時間をカバーしなければなりません。
その一方で、チーム内のメンバーにはSLAを浸透させ、同じ目的意識を持ってサポート業務にあたる必要があります。
目的意識を共有することでチームとしての一体感を高め、よりSLAを守る意識につなげるサイクルを生み出します。
また、チーム内で情報を抜けもれなく共有する仕組みを作る必要もあります。
連絡網の整備
関係各所の連絡先を集め、メーリングリストや緊急時の電話連絡網などを整備する必要があります。
特にシステム停止などにつながる重大な障害が発生した場合の連絡に備え、エスカレーションルートおよび連絡先の優先順位付けも必要です。
情報共有のための仕組み作り
近年のシステムサポートではサポートチーム内に加えて、クライアント、エンドユーザなど情報の共有をしなければならない相手が複数になることも少なくありません。
Slackなどのコミュニケーションツールを使用したり、サポート用のWebサイトを立ち上げてアナウンスを行ったりなども一般的に行われています。
チームとしての継続的なSLA達成
サービスの提供者がSLAを一人で守ろうとすると、SLAの内容によっては大変な負荷を強いられることになったり、実現することができなかったりということが起きます。
継続してサポート先のシステムを稼働させるため、一人ではなくチームで実現を目指すことが大切です。
そのためには負荷の集中を避け、継続可能な体制を作り、チームを維持していくことが重要となります。
チームとして継続的にSLAを達成し続けるための施策をいくつか挙げてみます。
必ずしもすべてのサポートチームに適用はできないですが、SLA、チーム状況と照らし合わせてより良いサポートチームとするために取り組んでいきましょう。
業務の属人化排除
誰か決まった人でないとできない業務が存在することは、継続的にサポートをする上では大きなリスクとなります。
業務のマニュアル化を進め、メンバーを教育し、特定の人物に依存し過ぎないチームを作る必要があります。
他のサポートチームとのメンバー兼任、交流
単純にメンバーを増やせるならば増やせば良いのですが、予算の関係もあって簡単には増員はできません。
他のサポート業務をやっているメンバーを兼任でチームを掛け持ちしてもらう形でチームに入ってもらいましょう。
一つ目の理由はサポート先を知っている人数を増やして層を厚くしておくため。
もう一つの理由は、他のサポートで行っている良い点を新たなメンバーがもたらしてくれることです。
定期的なサポート情報の分析と改善
週次や月次などサポートで発生したインシデント、障害、課題、作業時間をまとめたレポートを作成し、関係各所と共有します。
問題の発生傾向を確認し、発生しがちな部分にはチームをまたがってケアしてもらえる様にレポートの形にしておくことが大切です。
またレポートの内容を分析し、よく起きる問題には対応マニュアルを準備しておくなどの対策を打っておくことも可能となります。
まとめ
サポートチームにとってSLAは守るべき制約として大きなプレッシャーとなるものです。
しかし、ネガティブにとらえるのではなく、このSLAに向けてチームの意識をまとめ上げ、取り組むべき大きな目標として有効に利用しましょう。
ひいてはサービスサポートをビジネスとして成功にさせることにもつながります。