新商品や新サービスのリリースに伴い、コールセンター立ち上げを検討されている企業も多いでしょう。
コールセンター立ち上げは、どのようなステップで行えば良いのでしょうか?
コールセンター立ち上げには、押さえておくべき複数のポイントがあります。
この記事では、コールセンター立ち上げの手順や必要な設備・ツール、発生する費用などについて解説します。
コールセンター立ち上げに必要な4つの手順
コンセプト・目的・ゴールを設定する
コンセプト・目的・ゴールを設定し関係者に共有しなければ、それぞれの目指すところがバラバラになり、仕事の質が低下してしまいます。
ゴールはKGI(Key Goal Indicator)と呼ばれることもあり、KGIとは重要目標達成指標を指します。
コンセプト:高品質コールセンター 目的:お客様の課題解決 ゴール(KGI):顧客満足度業界NO.1
例えば上記のようにコンセプト・目的を設定することで、オペレーターは「高品質な対応」を意識しながら、「お客様の課題解決」を最優先すべきことだとして仕事に取り組みます。
オペレーターが複数人いたとしても、ある程度目指すべき方向性を一致させることができます。
また上記のようにゴール(KGI)を設定することで、管理者や責任者は「顧客満足度」という明確な観点から評価・改善を行うことができます。
コンセプト・目的・ゴールを設定しチーム全体で共有することで、コールセンターにおける軸が定まるのです。
現状調査し課題を明確にする
次にゴールから逆算して、現状で足りない部分を明確にします。
理想の姿(ゴール)と現状の差(課題)が明確でないと、何から着手して良いのかがわかりません。
例えば上記のゴール「顧客満足度業界NO.1」を達成するためには、お客様に他社よりも満足してもらわなければなりません。
もしも自社より高い顧客満足度を誇っている競合他社があるならば、そこと自社を比較することで、課題が明確になるでしょう。
さらに「顧客満足度を○○%向上させる」と、具体的な数値も見えてきます。
業務を設計する
現状の課題が明確になったら、次に業務を設計します。
設計するべきものは、大きく5つあります。
業務プロセス
コールセンターでは、主に以下の業務プロセスが必要になります。
- トークスプリクト(オペレーターが顧客に説明する際のマニュアル)
- モニタリング(目標達成の度合いを確認する)
- トレーニング(人材育成)
- 緊急時の対応方法の策定
マネジメント(KPI)
コールセンターで業務が適切に遂行されているかを確認するには、KPIを設定してマネジメントするのが一般的です。
KPIとはKey Performance Indicatorの略で、重要業績評価指標という意味です。
目標(KGI)を達成するための中間目標のことで、定量的に測定できるものを設定することが重要です。
コールセンターにおけるKPIは、一般的には以下が用いられます。
- 応答率(対応件数÷着信件数)
- 放棄率(オペレーターが対応する前に切れたコール割合)
- 平均通話時間
- 稼動率(オペレーターの労働時間のうち、顧客対応にかけた時間の割合)
各オペレーターのKPIの達成状況をマネージャーが確認し、最適化していくことで、コールセンター全体の目標達成を実現させます。
組織体制
目指すべきコールセンターを開設するために、最適な組織体制を整備します。
組織体制を整備するうえで欠かせないのが組織図の作成で、これはコールセンターの規模に関わらず作成するべきです。
コールセンターにおける組織図の役割は、以下の通りです。
- 指揮命令系統が明確になる
- 組織戦略の検討に活用される
オペレーション部門の組織図は、一般的には以下の図のようになります。
問い合わせ件数が多い場合や、用件ごとに窓口を変えたい場合は、それなりの人数のオペレーターが必要になります。
ここでは「自社のリソースだけでまかない切れるか」という点についても検討するべきです。
人材育成体制
組織体制と並んで必要なのが、人材育成体制です。
コールセンターの品質向上には、オペレーターの育成が欠かせません。
現在は、どの企業も人材不足の課題を抱えています。
採用したスタッフが離職しないように、安心して働けるフォロー体制と人材教育が必要なのです。
オペレーター育成には、以下5つの方法が効果的です。
- ベンチマーキングの実施(お手本となるコールセンターを探して分析する)
- 育成計画の作成(現状の課題と目標を報告し合う)
- 職場環境の改善(オペレーターの不安やストレスを解消)
- ミステリーコールの実施(外部委託の調査員に顧客を装ってもらいオペレーターの応対品質をチェックする)
- コールセンターシステムの活用(コール履歴管理やモニタリングでオペレーターの応対品質を分析する)
評価体制
オペレーターのモチベーションを上げるためには、定期的な評価が欠かせません。
評価項目は、企業の目標(KGI)に沿ったものが望ましいでしょう。
コールセンターの人事評価において大事なことは、以下の3つです。
- 評価の基準をしっかりと伝え、適切にフィードバックする
- 数値を用いて客観性を示す
- 人事評価システムはできるだけ効率化を図る
コールセンターを構築する
業務設計できたら、いよいよコールセンターを構築していきます。
必要な設備とシステム
コールセンターを運営するには、パソコンなどのハード面の設備と、システムなどのソフト面の設備の両方が必要になります。
コールセンター運営に必要なものとして代表的なのは、以下のものです。
- 電話回線(構内交換機「PBX」含め)
- ネットワーク設計(CTI機能・自社のネットワークと電話を統合する機能)
- 顧客情報管理ツール(CRM)
- コールセンターファシリティ(デスク、パソコン、ヘッドセット、業務内容に付随する備品、他)
特に、CTIとPBXはコールセンターにおける基盤となります。
CTI機能は、受話器を上げ下げすることなく通話を可能にします。
PBXは、着信や発信をコントロールします。
今ではCTIもPBXもクラウドサービスがあるため、手軽に利用できます。
マニュアルとFAQ
オペレーターの応対品質を一定化させるためには、マニュアルが欠かせません。
マニュアルは管理者用とオペレーター用の両方を作成します。
オペレーター用マニュアルには、以下の項目を記載します。
- 機器の操作
- 業務フロー
- クレームや緊急対応
- 基本の応対(スクリプト)
- 商品やサービスについて
管理者用マニュアルには、以下の項目を記載します。
- オペレーターのマネジメント(KPI管理)
- 管理者向けFAQ
- オペレーターの勤怠管理
- 管理者用のシステム操作
質の高いサービスを提供するにはFAQの作成・公開も重要です。
FAQを作成・公開することで、以下のメリットが得られます。
- カスタマーセンターに問い合わせなくても、顧客自身で問題解決できる場合がある
- オペレーターの負担が軽減される
FAQをマニュアルとして活用すれば、オペレーターの知識や経験に関わらず迅速で正確な回答ができます。
結果として問い合わせ1件当たりの応答時間も短縮され、業務効率が向上するのです。
採用
設計時に決めた組織体制を元に、人材の採用を行います。
何人必要なのかはもちろん、求めているのはどういう人材なのかという人物像を明確にしておきましょう。
人材育成
人材の採用と並行して、育成に向けた体制を作ります。
主に研修などの教育体制を構築します。
コールセンターの研修では、以下のことを学べると良いでしょう。
- 基本的な話し方
- ビジネスマナー
- コミュニケーションスキル
- コンプライアンスに関して
職歴にもよりますが、オペレーターの一般的な訓練期間は下図を参考にしてください。
参考:厚生労働省「jobtag(コールセンターオペレーター)」
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/64
コールセンターの立ち上げ・運営にかかる3つの費用
コールセンターの立ち上げ・運営には、様々な費用が発生します。
主な費用は、以下の3つです。
- 初期費用
- 運用・保守費
- 採用費・人件費
それぞれについて、みていきましょう。
初期費用
コールセンターを立ち下げる際、以下の初期費用が発生します。
- システム導入費
・CTIシステム
・自動音声ガイダンス(IVR)
・CRMシステム - 通信回線の導入費
- 電話機、ヘッドセット等の購入費(またはレンタル費用)
- パソコン、ソフトウェアの購入費
電話機は1台あたり1万円~3万円、パソコンやデスク、専用ツールなどは1セットで数万円、したがって1席(オペレーター1人)につき10万円近くは見ておいたほうが良いでしょう。
運用・保守費
初期導入費用と異なり継続的に発生するのが、運用・保守に関わる費用です。
主に以下の費用が発生します。
- 修理や部品交換にかかる費用
- アプリやネットワークの不具合が生じた時の対応費用
- 機器のメンテナンス費用
エンジニア担当者を自社内で確保できない場合は、業者への委託費用なども発生します。
運用・保守費の目安は、システム構築費用の15%程と言われています。
採用費・人件費
オペレーターの採用費や人件費も当然発生します。
さらに採用費は、内部コストと外部コストが発生します。
内部コスト | 外部コスト |
---|---|
採用担当者の人件費 | 求人広告費 |
面接時の交通費 | 人材紹介手数料 |
研修や懇親会の費用 | セミナーなどの会場費 |
新規の雇用に必要な費用は、一般社員の場合平均年収が300~400万円、派遣社員では地域や求人内容によって変わってきますが時給の平均が1,300円程度になります。
コールセンター立ち上げの注意点3つ
コールセンター立ち上げに関しては、注意すべき点がいくつか存在します。
人材確保・教育の難しさ
どの企業も課題として抱えているのが、優秀なSV(スーパーバイザー)やマネージャーといった職種の人材確保です。
質の高いサービスを提供するには、質の高いオペレーターが必要です。
そしてオペレーターの応対品質を向上させるためには、優秀なSVやマネージャーによる育成が欠かせません。
企業には、育成のノウハウを持つ人材の確保と、確保した人材を流出させない施策が求められます。
品質維持の難しさ
オペレーターの応対品質は顧客満足度に直結します。
そして応対品質が維持できなければ、企業イメージや売上の低下に繋がってしまいます。
多くのお客様のご要望に応えるためには多くのオペレーターを用意する必要がありますが、ただ人員を増やせば良いというわけではなく、応対品質も維持しなければなりません。
この量も質も追い求めなければならないところも、コールセンター運営の難しい点です。
運用・保守にかかる費用
前述した通り、コールセンター立ち上げには様々な費用が発生します。
特に人件費や保守費用などのランニングコストは、繁忙期や閑散期に関わらず固定で発生するので、企業にとっての負担は小さくありません。
コールセンターを自社で運営するのが難しい場合は、外注先へ委託することも検討しましょう。
コールセンター立ち上げ3つのメリット
社員の負担軽減
コールセンター立ち上げのメリット1つめは、オペレーターや現場管理者など社員の負担が軽減されることです。
電話対応専属者がいないということは、社員の誰かが電話に対応しなければなりません。
つまり電話が鳴るたびに自分の業務を一時中断しなければならず、業務がなかなか進みません。
これによって結果的に残業しなければならないこともあるでしょう。
コールセンターを立ち上げ専属のオペレーターを配置すれば、社員は自分の業務に集中できます。
残業が減れば、社員だけでなく会社にとってもメリットがあります。
コスト削減
コールセンター立ち上げのメリット2つめは、運営コストの削減です。
ACD(Automatic Call Distribution=自動着信配分)やIVR(Interactive Voice Response=自動音声応答)などのシステムを導入することで実現できます。
着信の振り分けやコール選別、ダイヤリングといったこれまではオペレーターが手動で行っていた作業が自動化されるので、少人数での稼働が可能になるのです。
またマニュアルやFAQを整備、活用することで応答時間短縮にも繋がります。
既存顧客の対応強化
コールセンター立ち上げのメリット3つめは、既存顧客の対応強化が図れることです。
コールセンターを立ち上げ応対品質を向上させることができれば、顧客満足度も向上します。
その結果、既存顧客が利用を継続してくれたり、新たに別のサービスを利用してくれたりすることも期待できます。
まとめ:コールセンター立ち上げはアウトソーシングもアリ!
以上、コールセンターを立ち上げる手順や発生する費用、得られるメリットについて見てきました。
複数のメリットがある反面、想像以上に手間や費用がかかることがお分かりいただけたのではないでしょうか?
コールセンターを立ち上げた後も、継続して運営するためには社内体制を構築しなければいけません。
自社でコールセンターを立ち上げる前に、まずはコールセンター会社に相談するのも選択肢の1つです。
コールセンターの外注化は、プロのスタッフによって応対品質向上が図れると同時に、社員がコア業務に集中できるといったメリットをもたらせます。
一度検討してみてはいかがでしょうか?
当社のコールセンターサービス「カスタマーサポートPlus」には
400社以上、800案件以上の対応実績がございます。
これらのノウハウを元にアドバイスさせていただきますので、
コールセンターに関するお悩みをお持ちの方は、一度ご相談ください。
例:どんなシステムを使えばよいのか分からない、現在の外注費用が高い、など