企業に固有の風土・文化・価値観などは、かつては企業が強く意識しなくても全社員に自然に浸透していきました。
しかし、近年は終身雇用・年功序列制度がほぼ崩壊し、人材の多様化が進んでいます。
経営環境も昔と比べると比較できないほど顧客の価値観の多様化、市場の変化の早さ、および国際間の厳しい競争に直面していることから、自社をブランディングするインナーブランディングの重要性が増しています。

インナーブランディングは、アフターサポートの効果を高めるうえでも重要です。
そこで、インナーブランディングの概要、メリット、方法、成功事例について紹介します。


インナーブランディングとは

インナーブランディングとは、自社(ブランド)が目指すべき経営理念や企業の存在価値・ビジョンなどを自社の社員・組織全体に浸透させ、目指す姿や理念・価値を実現させていく活動のことです。
活動は、社員への教育・研修活動、人事評価・報酬制度など幅広い範囲にわたって行うことが必要です。
インターナルブランディングとも呼ばれます。

なお、ブランディングとは「経営戦略としてブランドの構築・管理を行い、企業自身や企業が有する商品やサービスなどについて他企業、および競合商品・サービスとの差別化を図り優位性を確保すること」です。
インナーブランディングは、ブランディングを社外に対して行うアウターブランディングをより効果的・効率的に推進できるように社内向けに実施する活動です。


インナーブランディング6つのメリット

インナーブランディングの実施によって多くのメリットが生まれますが、主なメリットを6つ紹介します。

1.企業価値の向上

企業価値を高めることはコスト競争が厳しい時代には特に重要です。
同じ品質・機能・性能であってもブランド力が高いと顧客から指名され、価格競争に巻き込まれないビジネスが可能です。

現代は、アウターブランディングによる広告・宣伝でイメージをいくら高めても、顧客と接する部門がそのイメージとかけ離れた顧客対応や品質しか提供できないと、SNSなどによる口コミ発信でブランドイメージはまたたく間に失墜してしまいます。
そのため、企業が目指すブランドイメージにあった対応や品質を提供できるように、全社員にインナーブランディングを実施する必要があります。
これが企業価値の向上につながります。

2.組織力の向上によるアウターブランディングの強化

インナーブランディングの実施によって企業の経営理念や目指すべき方向が全社員に浸透し、同時に一体感が生まれ、個々の社員や組織全体のパワーを1つの目標に向かって集中できることから、組織力を向上させられます。
これは、アウターブランディングにとって、企業の目指すべき方向と社員・組織の意識が一致するため、その活動を強化し、効果を高めます。

3.エンゲージメントの向上

目指す方向が明確な企業・組織では、社員の企業や自社商品やサービスに対する愛着心であるエンゲージメントが高まります。
それは、「企業が目指していること」が分かると、社員は自分が「何のために仕事をしているのか」が理解できて、企業でのすべきことが明確になり、仕事に対するモチベーションがアップするからです。

モチベーションアップは、「この会社に貢献したい」という気持ちが強くなってエンゲージメントが向上します。

4.優秀な人材の採用や定着率の向上

インナーブランディングは社員のエンゲージメントを高めますが、このことは企業に適した優秀な人材の採用を容易にします。
また離職を防止し、社員の定着率を高めることに寄与します。

5.顧客満足度の向上

インナーブランディングとアウターブランディングの共鳴・共振によって、顧客が企業やブランドに対して持つ価値観や期待感と社員の対応や商品やサービスがマッチすることから、顧客満足度が向上します。

さらに、特に顧客に接点を持つサポート部門や営業部門がブランディングをベースに顧客に感動を与えられると、優良顧客として囲い込みができます。

6.業務改善による業務効率の向上

インナーブランディングを成功させて定着できれば社員のエンゲージメントが向上します。
これにより、業務にポジティブ・真剣に取り組む社員が増加することから業務に対する改善意欲が芽生えます。
この結果、業務遂行能力が自然に向上し、業務効率の向上につながります。


インナーブランディングを実施する手順と注意点

1.インナーブランディングの実施手順

1-1.経営理念・ビジョンなどの策定と自社の現状把握

すでに経営理念・ビジョンがあれば、時代や自社の強みなどにあっているかなどをあらためて検討します。
まだ策定されていない場合や見直しが必要な場合は、新たに策定して明確にします。

経営理念は、ミッション・社是・社訓などとして明文化されたりします。
ビジョンは経営理念をもとに事業経営を通じて実現させたいこと、または状態のことです。

自社の現状把握は、経営理念・ビジョンの策定ができている場合を除き、先に実施したり、同時並行で実施したりして、インナーブランディング実現に向けての課題など現状の状態を把握します。

1-2.具体的な施策・目標の立案

経営理念・ビジョンを社内に浸透させるための施策や目標に対して現状把握で分かった課題などを考慮して立案します。
目標はできるだけ数値で設定して、測定・評価しやすいようにします。

1-3.定期的に浸透の程度や目標に対する達成のレベルを測定

定期的に施策に対する効果測定を行い、浸透の程度や目標に対する達成のレベルを確認します。
確認の結果、効果のない施策は中止したり、施策に対する改善点などを見直したりすることを必要に応じて行います。

2.インナーブランディングを実施するときの注意点順

2-1.社員への押しつけ・強制による浸透を行わない

インナーブランディングを浸透させようとして、無理に経営理念やビジョンを復唱させたり、覚えることを強要したりすることは避けなければなりません。
経営理念やビジョンを実現することで、企業と社員がともに幸福になれることを理解させられるように進めなければインナーブランディングは失敗します。

2-2.施策のPDCAを継続して浸透させられるまで行う

インナーブランディングは長期的に継続しなければ効果は現れません。
そのため、施策に対してPDCAを行って、より良い施策になっていくようにしなければなりません。


インナーブランディングの成功事例

インナーブランディングの成功事例は多くありますが、ここでは2つの例を紹介します。

1.コーヒーチェーン店

広告に大きな費用をかけなくてもブランドイメージが高いコーヒーチェーン店として他社差別化に成功できているその企業は、社員を大切にすることで社員の満足度を高め、この結果「顧客満足度」を高めることに成功。

成功のために「社員満足度の先に顧客満足度がある」という考え方の徹底をインナーブランディングで行い、効果的な他社差別化を実現しています。

2.大規模リゾート施設

大規模リゾート施設を運営する企業は、インナーブランディングを徹底することで、顧客本位の接客が社員のみならずアルバイト社員までが実行できることで有名です。
リゾート施設としての運営ノウハウの高さに加えて、接客する社員の質の高さもあってリピート客を増加させています。

大規模な施設では多様な役割を社員が分担するため、インナーブランディングが全社員に浸透できていないと顧客満足度をなかなか高められません。


まとめ

企業のブランドイメージを高めるには全社員が時間をかけて取り組まないとなかなか実現できません。
特に、サポート部門は顧客からの問い合わせ対応の「良し・悪し」で顧客満足度が大きく変わることから、顧客の信頼を失わないようにしながら顧客満足度をあげなければならないので、インナーブランディングでは重要な役割を果たす部門となります。