IT・WEBサービスサポートを効率化できるKCS(ナレッジセンターサポート)とは?
IT・WEBサービスサポートは、ITの普及、IT技術の進化の速さ、マルチベンダー環境による顧客の利用、迅速な回答の必要性などによって、顧客ニーズの多様化・複雑化、量・質の拡大を招き、顧客満足度を高め、膨れ上がるサポート経費を抑制するためには業務の合理化・効率化に迫られています。
KCS(Knowledge-Centered Support:ナレッジセンターサポート)は、IT・WEBサービスサポートの業務の合理化・効率化を強力に推進できる手法です。
KCSとはどのような手法かについて初回では概要を紹介します。
続き①はこちら:【「KCSとは」連載・中編】IT・WEBサービスサポートをKCSによって効率化するために必要な知識
続き②はこちら:【「KCSとは」連載・後編】IT・WEBサービスサポートの効率化をKCSで実現する方法
KCS(ナレッジセンターサポート)とは
KCSとは、アメリカを代表するハイテク企業である「Microsoft」「Dell」「HP」「Oracle」「Cisco」などがサポートサービス業務について以下の課題が大きくなっていることに対して、その課題を協力して解決するために設立されたNPO(民間非営利団体)法人「サービス・イノベーション・コンソーシアム」が10年以上の年月と数十億以上の費用をかけて完成させたサポート業務で得られたナレッジを生かしてサポート業務を効率化するナレッジマネジメント手法のことです。
サポート業務で発生している主な課題
- 発生する問題の複雑化・範囲や量の拡大
- 顧客が要求するニーズの多様化
- サポートのコストの上昇と膨れ上がるサポート予算の削減ニーズ
- サポートが質や量が複雑化・拡大している一方でサポート担当者を教育・研修する時間が十分にとれない
- サポート担当者の教育・研修に時間がかかる
- サポート担当者のナレッジの共有が不十分でベテラン・優秀なサポート担当者のスキルが生かせていない
ナレッジマネジメントの概要とKCSの特徴
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントとは、企業などの組織に蓄積されている役に立つさまざまな知識、あるいは成功や失敗の経験または教訓や事例など再利用する価値のある情報やノウハウであるナレッジを管理(マネジメント)ことです。
経営や事業推進、業務遂行に有用なナレッジをいつでも、どこからでも必要なときにすぐに活用できるようにすることで、優秀な社員の業務遂行スキルや社内のさまざまな業務上の情報やノウハウを社員が利用できます。
これにより、全社員のスキルがアップし、業務の効率化と業務の質の向上を実現できます。
そのため、ナレッジマネジメントは、IT・WEBサービスサポート業務に限らずあらゆる業務についてその重要性が増しています。
しかし、いろいろな業務のなかでもナレッジマネジメントは、アメリカの有名IT関連のハイテク企業がサービスサポートに苦慮してコンソーシアム(共同事業体)を作ってまで課題を解決しようとしたほどですから、サポート業務には最も重要性の高いマネジメント手法の1つです。
KCSのナレッジマネジメントの特徴
KCSでは、サービスサポートで得られたサポートに必要なナレッジを、より有効に課題を解決できるようにはどうすべきかについて各企業が議論した結果が、ベストプラクティス(最も効率の良い最善の方法)として採用されているため、サービスサポートに最適化されたナレッジマネジメント手法です。
多くのサービスサポート部門にある一般的なFAQや、サポートに関するさまざまなノウハウ集がサポート業務の効率化に大きく寄与していないとしたら、ナレッジの活用がサポートサービスに最適化されていないからです。
IT・WEBサービスサポートは、一般的に技術の進化が速く製品やサービスは常に進化・変化しています。
また、顧客の利用環境も顧客ごとに異なり、また常に顧客の利用環境が同じではなく変化している可能性があります。
そのため、同じ内容の問い合わせであっても状況がまったく同じということは少ないことから、その問い合わせがあった時点での最善の回答を提供しなければならず、多く寄せられる問い合わせであっても最終的な回答の完成形はなく、常に変化しています。
そのため、FAQを作成して、その後にメンテナンスをしなければ、そのFAQはサポートの効率化にほとんど役に立たない可能性があります。
また、問い合わせの内容によっては、最初にピークがあって、その後、その問い合わせは大幅に減少していきます。
このとき、FAQが問い合わせのピーク後にしかできなければ、やはりそのFAQはサポート業務の効率化には大きくは貢献しません。
KCSでは、サポートサービスに必要なナレッジをサポート業務に最適化して利用できるため、サポート業務の効率化・生産性向上に大きく貢献します。
KCSを利用する効果・メリット
KCSを利用することで以下の効果・メリットが得られます。
顧客に対する効果・メリット
回答内容が的確でトラブルや疑問が速く解決するためサポート内容や製品やサービスに対する信頼性が向上し、顧客満足度が向上する。
企業(組織)としての効果・メリット
- 顧客の信頼度が高まることにより企業競争力を高められる
- 一次対応で問い合わせが終了することが多くなり、サポート業務の効率・効果が向上し、コストの削減ができる
- 組織内の連携が強化され、生産性の向上で社員の企業へのロイヤルティが向上し、離職防止効果が得られ、労働意欲が向上する
まとめ
KCSは、顧客およびIT・WEBサービスサポート部門、および企業全体に大きな効果・メリットをもたらすナレッジマネジメントを利用した手法です。
KCSは、アメリカの多くの企業が実践によって確認されたベストプラクティスのため、その効果は実証済みです。
KCSの具体的な方法については次回に紹介しますが、目的と目標は「ソリューションが見つけやすく、使いやすいナレッジのコンテンツを作り出すこと」です。
そのコンテンツは多くのIT・WEBサービスサポート部門が行っている対応履歴の記録から作成するため、言い換えると対応履歴をただの記録のままにしないで顧客へのソリューションにつなげられるようにすることです。