過去2回にわたってKCSの概要、効果、メリット、KCSで重要なナレッジマネジメントについて解説してきました。
今回は、KCSに関する解説の最後として、KCSを活用してIT・WEBサポート業務を効率化する方法、成功するために押さえておくべきポイントについて紹介します。

【過去の記事はこちら】

前編:【「KCSとは」連載・前編】IT・WEBサービスサポートを効率化できるKCS

中編:【「KCSとは」連載・中編】IT・WEBサービスサポートをKCSによって効率化するために必要な知識


KCSを活用してIT・WEBサービス業務を効率化する方法

KCSとは、サポート業務で得られたナレッジを生かしてサポート業務を効率化するナレッジマネジメント手法のことです。
サポート業務には、顧客から新しい質問がくることでナレッジが日々蓄積されていきます。
そこで、このナレッジを顧客への質問対応時に見つけやすく、使いやすいコンテンツとして記述するとサポート業務を効率化できます。
KCSでは「ダブルループプロセス」と呼ぶワークフローを使って得られたナレッジを効果的に活用できるようにします。

1.ダブルループプロセスとは

「ダブルループプロセス」には、「解決ループ」と「発展ループ」の2つ(ダブル)のループがあり、「解決ループ」は、サポート担当者のレベルで問題を解決するときに用いるワークフローです。
「発展ループ」は、サポート組織全体のレベルでサポート品質を向上させるためのワークフローです。

2.解決ループプロセスで行うこと

解決ループは4つのプロセスに分かれています。
1つ目のプロセスは、顧客からの質問を顧客視点で何が問題なのかを捉えます。
2つ目のプロセスは、その顧客の抱える問題が生じる利用条件、発生環境、そして解決策(未解決も含む)に整理するなど、それぞれのサポート業務にあった項目で構造化して記述します。
解決策が見つからない場合もありますが、そのときは問題がどのような環境・操作で起きたのかだけを記述しておきます。
3つ目のプロセスは、解決策を探し出し、解決方法が判明したときにその解決策を記述・記録します。

1から3のプロセスを繰り返し、ナレッジを再利用することで顧客の抱えるさまざまな問題が解決策として累積でき、有用で効果的なナレッジとして充実させられます。

4つ目のプロセスは、3のナレッジの記述をより検索しやすくするための修正やより良い解決策、精度の高い解決策に改善やブラッシュアップします。

3.発展ループで行うこと

発展ループも4つのプロセスに分かれます。
1つ目のプロセスは、解決プロセスの4つのプロセスを組織としてちゃんとできるように組織全体に定着させます。
そのためにナレッジとしてコンテンツをきちんと蓄積・保存し、検索、修正が簡単にできるツール・システムの導入が必要です。

2つ目のプロセスは、ナレッジとしてのコンテンツがより活用されるように考えます。
例えば、どのようなコンテンツが望ましいのかを検討し、最初からいきなり全面展開するよりも、対象者やナレッジの範囲を限定するなど試行錯誤してから進めるといいでしょう。
そのなかから、コンテンツとして何が必要なのか、コンテンツとしての理想の形が見えてくると検索や再利用などが行いやすくなります。

3つ目のプロセスは、KCSに取り組むサポート担当者のモチベーションを高めるために担当者の取り組み・実績に対する評価を行い、それを目に見える形で称賛することです。
評価ポイントを明確にして、可能であれば、インセンティブを授与すできればナレッジの蓄積・活用を活性化でき、より多くの問題に対するナレッジを解決策としてコンテンツにまとめられます。

4つ目のプロセスは、適切なリーダーシップの発揮です。
4つ目というより、KCSを推進するためには全体を通して必要なことです。
組織としてのビジョンを考え、モチベーションを高め、KCSの価値を啓発するとともに、推進しやすい環境を整え、個々のサポート担当者を支援し、組織としての成功を推進するリーダーが必要です。


KCSを活用してIT・WEBサービス業務を効率化するための3つのポイント

ポイント1.サポート業務担当者がコンテンツを作り上げるという意識を持つ

KCS導入以前では、質問に対応できる疑問に対するコンテンツ(回答案)は、製品やサービス担当の技術者が顧客の疑問点をあらかじめ想定して作るのが一般的です。
しかし、実際に顧客から質問を受けるのはサポート業務の担当者です。顧客からの質問は、想定外の内容も多く、また顧客が使う用語も社内で準備した用語ではないことも多く生じます。

そのため、事前に用意された回答案に沿って回答しても顧客はすぐに理解できない可能性が高く、顧客視点での柔軟な対応とはなりません。
技術的な内容に対する回答案は技術者でないと正確な回答を作成できませんが、その内容をどう顧客に回答するかはサポート担当者がコンテンツにしたほうがより良い内容にできます。

ポイント2.顧客からの質問はナレッジとしてすべて共有化する

従来は、質問対応のためのコンテンツは顧客にそのまま提供しても問題のない正確な内容で作成されます。
それ以外の情報は、個々のサポート担当者の知識・ノウハウとして蓄積され、組織全体で共有化されていませんでした。
しかし、KCSでは、どのような情報でも必ず共有化することが必要です。
例えば、顧客から質問を受けたとき、自分の知識で回答できたら、顧客対応を終えたらそのままにしないで、必ずその質問に対する回答が共有化されているかを確認して、もしなければ質問と回答を登録して蓄積し、共有化できるようにしなければなりません。

また、回答できない場合であっても、あるいは解決策ではないが、試してもらいたいことを顧客に伝えた場合も、その情報を共有化できるようにしなければなりません。
これはKCSが、サポート担当者が自分のためだけではなく組織全体のために行動することを必要としているからです。

ポイント3.固定観念を捨ててコンテンツを常に改善・ブラッシュアップする意識を持つ

IT・WEBサービスの世界は、常に進化・変化を遂げています。
過去の解決策では解決できなくなったり、より簡単な新しい解決策ができていたりします。
固定観念を捨てることでコンテツ内容の改善・ブラッシュアップがしやすくなります。
また、自分ひとりで解決策を考えないで、組織全体で考えるとより良い案を導き出せるとともにナレッジの共有化を深められます。


まとめ

KCSはナレッジやコンテンツの共有化のためのツールやシステムの導入が必要ですが、実践できれば顧客対応コストの削減、顧客対応時間の短縮、教育・訓練の時間・コストの削減、顧客利便性・満足度の向上などが期待できます。

なお、KCSはIT・WEBサービスで特に大きな効果が期待できますが、それ以外の業務・業種でのサポート対応においても質問の範囲が広く多岐に渡る場合や製品やサービスのライフサイクルが短い場合、あるいはサポート担当者の経験が少ない場合など幅広く利用できます。