「1:5の法則」として知られていますが、新規顧客の獲得は、既存顧客を維持するコストの5倍といわれます。
既存のお客様を大切にすると、お客様自身が商品を口コミで宣伝して、新しいお客様を開拓してくれるようになります。
そんな大切なお客様とはいえ、問い合わせを「1対多」でサポート部門が引き受けた場合、コミュニケーターを増員したり、教育研修に時間がかかったり、サポート部門の負荷は大きくなります。
このようなサポート負荷を軽減する方法のひとつとして、ユーザーコミュニティの活用は効果的な施策のひとつです。
サポートコミュニティとは、ユーザーどうしが最新情報や解決方法など知恵を教え合うインターネット上の情報交換の場です。
このコラムでは、サポートコミュニティが効果的な理由を取り上げます。
自己解決を望む消費者、教え合うユーザーのつながり
日本ブランド戦略研究所の『顧客サポート調査2016』によると、日用品に関するクラスタ(集団)の回答では、91.1%がサポートサイト上で「自己解決を目指す」という結果をレポートしています。
電話による問い合わせは5.5%、メールやフォームによる問い合わせは9.0%です。
(2016年6月実施、サンプル数:延べ10,000人)
商品やサービスにもよりますが、分からないことがあったときに、お客様はまず自己解決を図る傾向があります。
サポートサイトで分からない場合は、ネットで検索して解決方法を探します。
たとえば、アップル製品のユーザーは、企業と製品に対する思い入れが強く、ユーザーによるコミュニティや熱狂的なファンによって支えられてきました。
多くの匿名ユーザーがブログで問題解決の方法を公開しています。
iPhoneの使い方で分からないことがあって、インターネットで調べた経験のある人も多いのではないでしょうか。
8割以上が利用を望むブラザー販売のコミュニティ
ブラザー販売株式会社では、OK WAVEの仕組みを使って、2013年から製品利用者のための「サポート広場」というコミュニティを運営してきました。
利用者のアンケートでは、84%以上が今後もサポート広場を使いたいと回答しています。
「電話が早いが、使えない時間帯に使いたい」「マニュアルに載っていない、実際に使っている人からのQ&Aなので」などが理由として挙げられています。
顧客サポート部門が引き受ける問い合わせは、インターネットで調べても自分で解決できなかったこと、ユーザーコミュニティではどうしても分からなかった難題といえるかもしれません。
サポートの障壁を下げるために
「オンボーディング」というコンタクトセンター用語があります。
製品やサービスのマニュアルを読んだり、問い合わせをしたりしなくても使いやすいことを言います。
「on board」は飛行機に乗る場合などに使われますが、いわば乗りやすい状態です。
顧客サポートも、問い合わせをしやすいオンボーディングが大切です。
テキストコミュニケーションが主体となった現在、メールやチャットを気軽に使う人が増えました。
しかし、逆に電話による問い合わせは障壁が高まったのではないでしょうか。
固定電話(イエデン)の減少が原因と考えられますが、電話の応対が怖くて会社を辞める若手社員がいるような時代です。
顔の見えない顧客サポートの窓口に問い合わせることは、心理的負荷があります。
しかし、ユーザーどうしであれば仲間意識と親近感があります。
まとめ:サポートの輪を拡げること
冷え性で悩んでいたシニアの女性が病院に通ってもよくならず、偶然、近所の知人と立ち話をして知った漢方を購入して体質が改善した事例もあります。
お客様どうしがサポートし合えるコミュニティを作れば、口コミによって商品のよさを拡散できるだけでなく、顧客サポート部門の負荷を軽減できます。