お客さまの顔が見えない故に独特の難しさがあると言われている電話対応ですが、対面の場合と比べて特に相手の感情が分かりづらいというデメリットを持っています。
しかしそういった難しい状況でも、企業におけるお客さま対応の場合は、積極的にお客さまの声を聞いていかなければなりません。

今回は、「どのような心構えで臨めばお客さまの心をつかむような電話対応ができるのか?」
電話対応の最も基本的な事柄について解説します。


お客さま対応の意義を考える

お客さまからの問い合わせやクレームに対応することは面倒で手間の掛かることかもしません。
お客さま対応の心構えを検討する前に、まずその意義を少し考えてみましょう。

企業に問い合わせやクレームを申し出る顧客はほんの一部です。
多くのお客さまは不明点や不満があってもそのままにしておく、いわゆる「サイレントマジョリティ」=「物言わぬ消費者」と言われる層です。
サイレントマジョリティ層は、不満点があってもそれを訴えたり申し入れなどせずに黙ってそのままその企業から離れていく、そのような存在です。

サイレントマジョリティ層と違ってわざわざ自分の時間を使って企業に問い合わせやクレームを申し出てくるお客さまは、発生した問題の積極的解決を望んでおり、それは何よりその製品やサービスに対して一定上の期待値を持っているからです。
そしてその期待に応えることで自社に対する信頼やブランドが向上し、より大きなロイヤルティを獲得することができます。

実際にクレームを申し立てて解決した顧客と、不満を持ちながらクレーム申し立てなかった顧客と比較すると前者の方が再購入率が高い、というよく知られた米国での調査結果も存在します。
(米国TARP社による調査、グッドマンの法則とも呼ばれる)

そのように考えると、自社に何らかの問い合わせをしてくるということは、自社のブランドを向上させ、再購入や優良顧客への誘導のチャンスをお客さまの方から与えてくれていることになりますので、それはむしろありがたいことであると言えるでしょう。

一般的にネガティブに捉えられがちな問い合わせやクレームに対するお客さま対応の意義は、そのような点にあると考えられます。


まず相手の言うことを「聞く」という態度

お客さま対応の心構えで最も大切なこと、それは「相手の言うことを聞く」という姿勢です。
当たり前のようなことですが、いつの間にか自分が言わなければならないこと、伝えなければならないことに集中しすぎてしまい意外と忘れがち。
そして単に聞いているだけではなく、自分がしっかりと聞いていることが相手に伝わらなければなりません。

人は自分の言葉を相手が聞いていることが分かって初めて自分が理解されていると感じることができます。
一方的に話し続けるセールス電話ほど不愉快なものはありません。
なぜならこちらの言うことを一切聞かず、自分の言いたいことだけをひたすら話し続けるからです。

仮にセールス電話を掛ける場合でも、本来なら相手の状況をお伺いして、その状況にあった製品やソリューションを薦めるべきであって、まったく自社製品の需要のない相手に対して売り込みを続けても、時間が無駄であるばかりか相手を不愉快にさせるだけで売上向上は到底望めないでしょう。
むしろ自社のブランド価値を下げてしまうだけです。


共感する力

ただ単に相手の話しをよく聞いているだけではお客さま対応の「プロ」としては失格です。
しっかり聞いた上でさらに相手の気持ちに「共感」することで始めて発生している事象の意味やどのような対応が必要なのかが理解できたり判断することができます。

共感とは、言い換えると相手の立場に立ってその物事を捉え直すということで、安易にお客さまの気持ちに同調することとは異なります。
相手の気持ちを理解することも大切ですが、その気持ちさえも客観的に捉えることができなければ、例えばお客さまの望まれる対処を正しく行うことはできません。

問い合わせであろうとクレームであろうとお客さま対応においては、その意義を理解した上で、「しっかり聞いて相手に共感する」という心構えで臨むことが、お客さまにとっても企業にとってもより良い結果を導き出すことになります。

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