顧客ロイヤルティ、ブランドロイヤルティ、従業員ロイヤルティなど、さまざまなロイヤルティを向上させることは企業活動を行ううえで大きなメリットを生み出します。
例えば、ブランド力アップによる他社競争力の強化や低価格競争からの脱却、顧客の囲い込みや良いクチコミによる売上増、および従業員のモラルアップによって、働く意欲が向上し組織の士気が上がり、仕事の生産性や効率アップ、離職率の低下などのメリットが生まれます。
サポート部門は、顧客との重要な窓口業務であることからロイヤルティに関する知識を持ち、ロイヤルティを高められる業務を推進することが重要です。
そこで、ロイヤルティの意味やメリット、ロイヤルティを向上させる方法について紹介します。
ロイヤルティとは
ロイヤルティとは、英語の「loyalty:忠誠、忠義」から来ており、ビジネスの世界では、顧客や一般消費者が企業そのもの、あるいは企業ブランドや製品・サービスに対して抱く信頼感・愛着・親近感・こだわり・優越感などの好意的な感情、および従業員が感じる愛社精神・忠誠心・強い帰属意識などを意味する用語です。
上記の定義でも分かるとおり、ロイヤルティは顧客や従業員の意識のなかにある好意的、あるいは忠誠を尽くしたいという損得を離れた感情でなければなりません。
そこでロイヤルティの向上を目指すときに重要なことは、心理的なロイヤルティを向上させなければならないということです。
顧客に何らかの経済的なメリットを与えて継続して何度も製品やサービスを購入してもらうようにすることや店舗やホームページに無差別・無目的に集客するなどは、真の顧客ロイヤルティを高める施策ではないということに注意が必要です。
なお、対象顧客を選別し、心理的なロイヤルティを高める意図のもとに行われる施策の場合は、問題にはなりません。
ロイヤルティの向上がマーケティングで重要な理由
アメリカの経営学者でマーケット論の権威「フィリップ・コトラー」は、著書「コトラーのマーケティング4.0」で、カスタマージャーニー(顧客が最終的に購入するまでの行動)は、購入ではなく、顧客ロイヤルティを極大にすることをゴールにするべきという考えを打ち出しています。
その理由は、デジタルテクノロジーの発達した現代においては、企業と顧客、顧客と顧客同士がホームページやSNSで緊密につながっていることから、購入に関して広告や宣伝よりもクチコミなどによる情報の影響力が強いこと。
経済が低迷している状況では新規の顧客獲得を重視するよりも既存顧客の囲い込みによる再購入や、既存顧客からの紹介やクチコミなどによって売上を伸ばすほうが、費用対効果が高いことなどです。
ロイヤルティを向上させるメリット
ロイヤルティは好意や愛着を持つ心であり、忠誠を尽くし帰属意識を強く持つことですから、ロイヤルティを持った顧客や従業員は以下のような行動を示します。
顧客は、特定の企業(ブランド)の製品・サービスを多少の価格差や性能・機能差があっても継続して購入。
また、使用している製品・サービスの良い点をクチコミで知人・友人にSNSなどで積極的に告知します。
一方、従業員は企業・組織に貢献したいと考え、積極的に働きます。
結果として顧客のロイヤルティも向上することから相乗効果が生まれます。
ロイヤルティを向上させることは、これらの行動をさらに強化・拡大するため、生まれるメリットは多岐にわたります。
- 企業やブランドに対する好感度が上がり、他社差別化を強力にできる
- 価格競争に巻き込まれないため価格の維持や顧客1人あたりの単価アップができる
- 機能や性能で差別化が困難な製品やサービスも競争力を確保できる
- リピーターが増え、他社への売りかえを防止し、クチコミで一定の安定した売上が見込める
これにより、売上・利益をアップでき、また経営を強化・安定させられます。
マーケティングには一般的な法則として、新規顧客へ販売するコストは既存顧客に販売するより5倍のコストがかかるという「1:5の法則」および、既存顧客を囲い込み、顧客離れを5%改善すると利益が25%上昇するという「5:25の法則」があります。
- 従業員の働く意欲が高く、組織が活性化する
これにより、業務を高い生産性で推進でき業績アップに寄与するほか、離職率低下や教育・研修の削減により採用や研修などの人事コストを削減できます。
「従業員満足なしに顧客満足なし」と言われるとおり、企業が利益を上げるためには顧客ロイヤルティの向上が必要であり、顧客ロイヤルティを向上させるには従業員ロイヤルティの向上が必要です。
従業員ロイヤルティが低いと、「離職者の増加」「遅刻や欠勤の増加」「勤務態度の悪化」「自己成長意欲の低下」「顧客情報や機密情報などの漏えい」などを引き起こし、結果として業績低下、企業の信用失墜、顧客ロイヤルティの低下を招きます。
ロイヤルティを向上させる方法
ここでは、顧客ロイヤルティを向上させる方法について紹介します。
ただし、上記の説明のとおり、顧客ロイヤルティと従業員ロイヤルティは車で言えば両輪であり、相互に関係していることから両方を向上させることが必要です。
手順1.顧客やユーザーの声に耳を傾け、顧客ロイヤルティを高めるために本質的に必要な課題を見つける
手順2.顧客との接点を見直し、顧客ロイヤルティを高めるために必要な施策をそれぞれの接点で考える
手順3.手順1,2での課題に対する対策や必要な施策を実施する
手順4.実施した結果をNPS(注)で評価し、必要に応じて改善する
手順5.改善の効果がない場合も含めて、手順1-4を繰り返す
(注)NPS(Net Promoter Score:ネット・プロモーター・スコア)とは、アメリカのコンサルティング会社が考案した顧客ロイヤルティを示す指標のことです。
Apple社やGoogle社などが導入し、一定の有効性があったことから多くの企業が採用しています。
具体的には、顧客やユーザーに「企業(ブランド、製品、サービス)を友人や同僚にすすめる可能性はどのくらいですか?」という質問を行い、0~10点の11段階で評価・回答してもらいます。
推奨度の高い9,10点を推奨者、7,8点を中立者、推奨度の低い0-6点を批判者として3つのグループに分け、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値を現在の顧客ロイヤルティとして数値で示す方法です。
施策実施前と実施後のNPSの値を比較して評価することで施策の効果が分かります。
顧客は常に購入によって得られる期待値を顧客ごとに持っています。
その期待値を満足させることは当然必要ですが、その期待値を上回るように考えて実践できると、そのとき顧客は満足以上の感動を覚えます。
そして、この感動は、顧客にこの製品やサービス、あるいは販売している企業はすごいと思わせ、強いロイヤルティを与えます。
顧客に感動を与えることは、決して難しいことではなく、顧客が不満を持っていることを見つけ出して、それを改善するだけでも与えられます。
まとめ
企業として成長していくうえで、ロイヤルティを向上させることが重要な時代です。
特に、顧客と接する回数が多く、購入後も接点を持つサポート部門が顧客ロイヤルティを向上させる重要な役割を果たします。
ロイヤルティについて理解し、ロイヤルティを高める施策を実施するようにしてください。