最近、カスタマーハラスメント(カスハラ)という言葉をよく耳にします。
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、「カスタマー(顧客)や取引先からの悪質・理不尽なクレームや、不当・過剰な要求」を指す言葉で、近年では、新型コロナウイルスの影響を受けやすいドラッグストアや地方自治体の窓口で特に問題視されました。

そしてこのカスハラは、コールセンターでも発生しています。
カスタマーハラスメント(カスハラ)は従業員の離職に繋がりますし、サービスの品質を落とすことにも繋がりかねません。
また、カスタマーハラスメント(カスハラ)を放置するということは、企業の安全配慮義務違反となってしまう可能性もあります。
今回は、そんなカスタマーハラスメントについて解説します。

そもそもカスタマーハラスメントとは

最初にカスタマーハラスメントについてご説明します。

カスタマーハラスメントの概要

冒頭でも説明した通り、カスタマーハラスメントとは、「顧客や取引先からの悪質・理不尽なクレームや、不当・過剰な要求」を指す言葉です。
相手が顧客の場合は、「顧客」との立場関係を利用したパワーハラスメントとも言えます。

カスタマーハラスメントは年々増加しています。
UAゼンセンが2020年7月~9月に行ったアンケートによると、なんとサービス業従事者の半数以上が「直近2年以内に迷惑行為の被害にあったことがある」と答えたのです。

また、迷惑行為があったと答えた人のうち、3割以上の人が「新型コロナウイルスの影響による迷惑行為があった」と回答しており、新型コロナウイルスが感染拡大してからカスタマーハラスメントも広がっているということが分かります。

実際、カスタマーハラスメント実態調査(2021年)(株式会社エス・ピー・ネットワーク)でも、約2割の人が「新型コロナ禍の影響でカスタマーハラスメントが増えている」と回答しています。
ただ、この調査の中では「新型コロナ禍の影響ではないが、カスタマーハラスメントが増えている」と感じている人も15%に上っていますので新型コロナウイルスの影響がなくとも、カスタマーハラスメントは増えている状況です。

こうした実態もあり、厚生労働省の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書には、「顧客や取引先からの迷惑行為」という項目が設けられました。
国としてカスタマーハラスメントを問題視する時代になってきているのです。

厚生労働省「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」より一部抜粋
厚生労働省「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」より一部抜粋

カスタマーハラスメントの具体例

カスタマーハラスメントの具体例には以下が挙げられます。

  • 暴力をふるう
  • 暴言を吐く
  • 大声で怒鳴る
  • 土下座を強要する
  • 正当な理由もないのに金品を要求する

これらは一例ですが、ここに挙げたものだけでも業務に大きく影響が出るのは言うまでもありません。
企業、および働く本人にとって、カスタマーハラスメントは大きな支障となります。

特にコールセンターは、電話越しで顔が見えない状況です。
そのため、対面接客よりも辛辣な言葉を投げかけられたり、横柄な態度で接されたりすることも多くあります。
さらに最近は実店舗を減らして電話やメールに窓口を置く企業が多くなっています。
そのため、これまで実店舗の店員に向けられていたクレームが、電話・メールの窓口に集中し、コールセンターの従業員にカスタマーハラスメントが集中してしまうという傾向も見られます。

カスタマーハラスメントが増える背景

カスタマーハラスメント(カスハラ)が増えている理由の一つに「SNSの普及」が挙げられます。
SNSで多くのカスタマーが発言することで、カスタマーの影響力や発信力が大きくなったのです。
結果、過剰とも言える高品質なサービスの存在が広まってしまい「ここまでやってもらうのが当然」と権利意識・要求レベルが高まるという現象が起きています。

また、企業側もSNSでこのような情報発信が増えたことで「顧客からの評価を下げてはならない」と考えるようになり、できるだけカスタマーの要望に応える方針をとっています。
この方針が結果としてさらにカスタマーハラスメントを生む原因にもなっています。

SNSの普及
SNSの普及

カスタマーハラスメントが問題になる理由

カスタマーハラスメントが問題になる理由は大きく分けて3つの観点があります。

  • 従業員の心身の健康を害する恐れがある
  • 離職につながる危険性がある
  • 質の高いサービスを提供できなくなる

前述した「カスタマーハラスメント実態調査(2021年)」において、カスタマーハラスメントに対応することによる影響が報告されており、以下はその内の上位3つです。

1位:ストレス増加
2位:業務遅延
3位:仕事意欲の低下

なんと、約9割の人が「ストレス増加」の影響があると答えています。
業務遅延や仕事意欲の低下も報告されていますが、これらの根本的な原因はストレス増加にあると考えてもよいでしょう。

また、このような状況に置かれた従業員は離職を思い立つケースも多く見受けられます。
強いストレスは仕事に対しての嫌悪感につながり、それが離職にまでつながる危険性があるのです。
人手不足や働き方改革が叫ばれている昨今において、カスタマーハラスメントへの対応がいかに企業の急務となっているかが分かるのではないでしょうか。

他にもカスタマーハラスメントの対応に時間を取られ、質の高いサービスを提供できなくなるという問題も起こります。
カスタマーハラスメントは時間を無駄に消費するだけでなく、他のカスタマーの対応にも影響が出てしまうのです。

カスタマーハラスメントとクレームの違い

カスタマーハラスメントが深刻化しているとは言え、ほとんどのクレームは通常のクレームです。
カスタマーハラスメントとクレームには以下のような違いがあります。

  • カスタマーハラスメント:カスタマーの目的はストレス発散や憂さ晴らしなどで、ゴールや着地点がない
  • クレーム:カスタマーの目的は問題を解決・改善してもらうこと

この違いは非常に大きなものです。
クレームならば最終的には商品やサービスの改善に役立てることができますが、カスタマーハラスメントはただただ時間や精神を消費するばかりで、生産性は無いに等しいのです。

なお、カスタマーハラスメントとクレームを見分けるポイントは「顧客からの意見や行為が、提供している商品・サービスに、必要なものか・会社としてしなければならない業務か」という点です。
これに該当しない意見や行為はカスタマーハラスメントだと考えて、注意して対応すると良いでしょう。

カスタマーハラスメントとクレームの違い
カスタマーハラスメントとクレームの違い

カスタマーハラスメントに対してやるべきこと

カスタマーハラスメントに対して、担当者がやるべきことと企業がやるべきことをまとめます。

担当者がやるべきこと

担当者は絶対に一人で対応しようとせず、チームメンバーや上司に報告をしましょう。
後述しますが、企業は報告のルールなどを定めておく必要があります。
担当者はそれを理解して、ルールに沿っていち早く相談することが重要です。

企業がやるべきこと

企業としてはカスタマーハラスメントが起こる前提での事前対策が必要です。
例えば以下の取り組みをしておきましょう。

  • クレームとカスタマーハラスメントを区別する線引きを明確にする
  • カスタマーハラスメント対応マニュアルを作る
  • カスタマーハラスメントが起きたときの報告フローを決める
  • ロールプレイングを取り入れた、カスタマーハラスメントへの対応方法を研修する
  • クレームや、起こったカスタマーハラスメントをデータベース化して会社全体で共有する
  • ストレスチェックなどを行い、カスタマーハラスメントの被害者をフォローする
  • カスタマーハラスメントに対する態度を明確にする

※ストレスチェックのやり方については、こちらの記事もご確認ください。

特に重要なのは従業員やカスタマーに対してカスタマーハラスメントへの対応を明確にしておくことです。

効果的かつすぐに実行できるのは「カスタマーハラスメントポリシー」を策定・公開することです。
これにより、対外的には抑止効果を生み出せますし、従業員もカスタマーハラスメントを受けてしまったときに一人で抱え込んでしまうことがなくなります。
(例:SmartHRの「カスタマーハラスメントに対する行動指針」

労働契約法第5条では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と規定されています。
つまり企業は「必要な配慮」をしなければ安全配慮義務違反となってしまうかもしれません。
法律の観点からも、カスタマーハラスメントによって従業員が心身を害することのないように、ルールを策定するなど企業は最大限の配慮をする必要があります。

まとめ

昨今、カスタマーハラスメントは大きな社会問題になっています。
特に新型コロナウイルスの影響でカスタマーハラスメントの報告が増えていますので、企業はカスタマーハラスメントへの対応が急務となっています。

カスタマーハラスメントへの対応として最も意味を持つのすぐに取り組めるのは「カスタマーハラスメントポリシー」を策定・公開することです。
取り組めている企業はまだまだ少ない状況ですが、今後、カスタマーハラスメントが増加・深刻化する可能性を踏まえ、早急にポリシーの策定や公開から始めてみると良いでしょう。