IT・WEBサービスサポート業務の品質を高めるための基本は、言うまでもなく問い合わせの内容や意図を正確に把握し、顧客の求めに沿って迅速に解決策を提示することです。
しかし、それだけではサポート品質を高められない場合があります。
その理由と、その対策としての考え方(心構え)について解説します。
特に、IT・WEBサービスのサポートで起こりやすいので、その原因と理由を理解し、しっかりとした対策が必要です。


IT・WEBサービスサポートでサポート品質が低下する原因と理由

IT・WEBサービスサポートへの問い合わせに対して正確で迅速な解決策を提示するだけでは、サポート品質が十分ではなく、逆に低下することも考えられる原因と理由について紹介します。

1.顧客がサポート窓口に問い合わせをしてくるときの2つの感情

IT・WEBサービスに限らず他業種でも、サポート窓口に問い合わせをしてくるとき、顧客の感情は一般的に2つあります。
1つは「一次感情」で、もう1つは「二次感情」と呼ばれる感情です。

「一次感情」とは、サポート窓口に問い合わせをしてくるきっかけとなった原因から生じる感情です。
例えば、購入したばかりのIT機器、あるいは問題なく利用できるとすすめられて購入したソフトウェアに問題が起きたときに生じる製品や、そのメーカーに対する失望の感情です。
「二次感情」とは、そのやりきれない失望をサポート窓口に強く訴えるために湧いてくる「怒り」の感情です。

心理学では「怒り」は二次感情と言われているとおり、「怒り」の前には必ずそれが生じる原因の「一次感情」があります。
なお機器やソフトウェアが原因で金額的に大きな損害が出た場合などでは、「一次感情」が「損失額に対する怒り」の感情になるため、「二次感情」は、サポート担当者の説明も耳には入らないほどの大きな怒り(クレーム)になることがあります。

なお、サポート窓口に問い合わせをしてきたときに顧客から「怒り」を感じなくても、それは顧客が理性で怒りの感情を抑えているからです。
まったく怒ってはいないと考えるのは危険です。

2.IT・WEBサービスサポートで起きやすい対応の間違い

私たちはサービスの提供を受けるとき、事務的・機械的に対応されるよりも笑顔で対応されたりちょっとした気遣いが感じられたりしたときに、同じ内容のサービスであっても、その満足感に大きな違いを感じる経験を多数しています。
例えば、高級レストランで食事をするとき、「おいしい食事をしたい」という目的のほかに、「高級な雰囲気や家庭では味わえない一流の接客技術によるもてなしを受けたい」という目的もあります。
それにもかかわらず食事しか提供しない対応では、顧客のサービスに対する品質の評価は低く、支持を得られない可能性があります。

このような間違ったサービス対応を、特にIT・WEBサービスサポートは犯しがちです。
その理由は、顧客が怒りを抑えて冷静に質問してきているとき、IT・WEBサービスサポートへの問い合わせは技術的な内容がほとんどであり回答に気配りや思いやりは必要ないことから、どうしても事務的・機械的に回答してしまうからです。

しかし多くの顧客は理性で怒りを抑えているのであって、問い合わせをしてきている裏には大きな怒りが隠れている可能性があります。
表面的にはトラブルや不明なことを解決したいための問い合わせであっても、その裏には、そのために「無駄な時間を浪費した」「大切な作業ができずに迷惑した」などの怒りがあり、そのことを分かってくれているのかという気持ちを持っていることがあります。
このことを無視すると、顧客は問い合わせが解決しても不満を持ってしまいます。
そこでサポート対応するときには、技術的な対応に加えて顧客の裏にある怒りの感情を察知し、それを理解する努力を意識して行うことが重要です。
その結果、同じ内容を回答する場合でも顧客が感じるサポート品質を大きく向上できます。


IT・WEBサービスサポートの品質を高めるために必要な5つの考え方

同じ対応でも顧客が変わるとまったく違う受け取られ方になるため、IT・WEBサービスサポートの品質を高める具体的な方法を提示することは困難です。
そのため、顧客の言動・反応を確認しながら臨機応変に対応しなければなりません。
ここでは対応するときの考え方について紹介します。

1.顧客の共感を得られるように臨機応変な対応を心がける

顧客が問い合わせをしてくるのは、技術的な解決方法だけではなく、何らかの怒りや不満、不安を分かって欲しいという場合があります。
このことをしっかり認識して、顧客の置かれている状況を聞き出し、顧客の立場を理解し、顧客に寄り添って回答するようにします。
マニュアルに沿ったような事務的で機械的な対応ではなく、顧客のことを考えた人間味のある臨機応変な対応が必要です。

2.顧客の期待をこえる対応を心がける

顧客は、サポートを依頼するときだけに限らず何らかの行動を起こすとき、その行動に対して一定の期待をしています。
IT・WEBサポートへの問い合わせでは、「問い合わせに対する回答を得たい」というのが最低限の期待値です。
しかし「もっとうまい使い方や別の便利な使い方も知りたい」と期待しているかもしれません。
あるいは、別のIT・WEBサービスのサポート窓口では、初心者にも分かるような丁寧な対応だったので、それを期待している可能性もあります。
常に顧客の期待値をこえる対応を心がけることは非常に大切なことです。
顧客満足よりも高い感動を与えられるので、顧客が裏の感情として怒りを持っていても、その感情を軽減させられます。

3.初回の問い合わせ対応に最も注意を払うように心がける

IT・WEBサービスサポートではサポートが複数回にわたることが多くあります。
顧客から怒りの感情がまったく感じられなくても実は大きな怒りの感情が隠れていて、そのことを把握できずに簡単に処理しようとしたことで、顧客の怒りが表面に出てしまうことがあります。
また、顧客が初回のサービス対応の印象を悪く思ってしまうと、2回目、3回目とサポートが続くことで徐々に印象が悪化していって、大きなクレームにつながることも考えられます。
逆に、初回の印象が良いと、怒りの感情があってもサポートを継続していくことで、徐々に怒りなどの悪い感情が軽減・消滅していくことがあります。

4.リアルタイムな対応と密な連絡を心がける

IT・WEBサービスサポートでは、顧客の環境で起こる現象と同一の現象がサポート環境では起こらず、原因究明と解決策の提示がなかなかできないなど、回答に時間がかかることがよく起こります。
このような場合は、正確に回答しようとして原因究明に時間をかけて連絡を怠ると、小さな怒りであっても大きな怒りに変化します。
リアルタイムな対応ができずに回答に時間がかかる場合は、顧客の状況を顧客目線で顧客と同じ立場で解決に努力していることを蜜に連絡するように心がけます。

5.顧客に不安感を抱かせないで信頼感を得られるように心がける

顧客との対応において、不安を感じさせたり、信頼感を与えられない対応をしたりしないように、また義務的に対応しているような印象を持たれないように心がけます。
不安を感じ、信頼できないと感じると、顧客は苛立って怒りを感じることが多くなります。
それに加えて、問い合わせの問題が解決していないのに義務で対応しているように思われてしまうと怒りが大幅に増幅し、クレームに発展するので注意が必要です。


まとめ

IT・WEBサービスサポートでは顧客からの問い合わせに正確・迅速に応えることが最も重要です。
しかし、それだけではサポート品質を十分に高められない理由と、その対策としてIT・WEBサービスサポート担当者が、心がけるべき考え方について紹介しました。
サポート品質を現状よりもさらに一歩高めるための参考にしてください。

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