カスタマーサポートの評価は、対応件数だけで判断できるものではありません。対応スピードや問題解決率、顧客満足度などを数値で把握することで、業務の課題や改善点を明確にできます。

その際、役に立つのがKPI(重要業績評価指標)です。
KPIを設置することで、どのくらい目標を達成できているか客観的に判断できます。

しかし、KPIを設定していても、「どの指標を優先して確認すればよいのか分からない」「数値を取得しているだけで改善につながっていない」と悩む担当者も珍しくありません。

本記事では、カスタマーサポートで確認したい主なKPIや設定する目的、導入するメリットについて解説します。

▼ カスタマーサポートにおけるKPIとは

カスタマーサポートでは、日々多くの問い合わせに対応しています。

企業にとっては顧客の意見を聞ける貴重な機会であり、顧客満足度にも影響するでしょう。

カスタマーサポートの業務品質について評価する場合も、KPIが役立ちます。
ここでは、KPIの基本的な考え方や設定する目的について紹介します。

・KPIとは

KPIとは、「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれています。

最終的な目標を達成するために、途中経過を数値で確認する指標です。
例えば、「顧客満足度を向上させる」という目標がある場合、一次解決率や平均処理時間などをKPIとして設定することで、改善状況を客観的に把握できます。

KPIは、KGI(Key Goal Indicator)という最終目標をどのくらい達成しているかを測る指標でもあります。

例えば、「顧客満足度90%達成」や「問い合わせ対応コストを20%削減する」といった目標がKGIです。
KPIは、このKGIを達成するために必要な中間指標として活用されます。

・KPIを設定する目的

KPIを設定する目的は、業務状況を数値で把握し、改善につなげることです。

例えば、「問い合わせ対応が遅い」という課題があっても、一次応答時間や平均処理時間を測定していなければ、どこに問題があるのか判断できません。

また、目標となる数値を設定することで、担当者全員が同じ方向を目指しやすくなる点もメリットです。
改善施策を実施した後も、KPIを継続的に確認することで効果を検証できるため、より精度の高い運用につなげられます。

▼ カスタマーサポートでKPIを設定するメリット

KPIは、現状を把握するだけではなく、業務改善や顧客満足度向上にも役立ちます。
ここでは、KPIを設定することで得られる主なメリットを紹介します。

・業務状況を数値で把握できる

KPIを設定すると、現在どのくらい目標を達成しているかを数値で把握できるようになります。

数値として可視化されることで、担当者の感覚だけに頼らず現状を分析できるため、改善が必要なポイントも見つけやすくなるでしょう。

例えば、問い合わせ件数や応答率、平均処理時間などを確認することで、「問い合わせは増えているのか」「対応時間は改善しているのか」といった状況を客観的に判断できる点がメリットです。

・解決が必要な課題を発見しやすくなる

KPIを確認することで、業務上の課題も把握しやすくなります。

例えば、問い合わせ件数は変わらないものの一次応答時間だけが長くなっている場合、人員不足や業務フローに問題がある可能性があります。

また、一次解決率が低い場合は、マニュアル不足やオペレーター教育が必要かもしれません。

このように、数値を比較することで原因を分析しやすくなり、優先的に改善すべき課題を明確にできます。

・改善施策の効果を検証しやすい

KPIを設定しておけば、改善施策の効果を確認する際にも有効です。

例えば、FAQを充実させた結果、問い合わせ件数が減少したり、チャットボットを導入したことで一次応答時間が短縮したりすれば、施策の効果を数値で確認できます。

期待した成果が得られなかった場合でも、別の施策へ切り替える判断がしやすくなるでしょう。

改善と検証を繰り返すことで、自社に合った運用方法を見つけやすくなります。

▼ カスタマーサポートで確認したい主なKPI一覧

カスタマーサポートでは、複数のKPIを組み合わせて確認することが重要です。
ここでは、多くの企業で活用されている代表的な指標を紹介します。

・応答率

応答率とは、問い合わせに対して実際に対応できた割合を示す指標です。
例えば、100件の電話があり、そのうち90件に対応できた場合、応答率は90%になります。
応答率が低い場合は、人員不足や対応体制に課題がある可能性があります。顧客満足度にも影響しやすいため、定期的に確認したいKPIの一つです。

・一次応答時間

一次応答時間とは、問い合わせを受けてから最初の回答を行うまでの時間です。
電話だけではなく、メールやチャットなどの問い合わせでも活用され、顧客が最初にどれくらい待たされたかを把握できます。

一次応答が早いほど、顧客は「対応が早い企業」という印象を持ちやすくなります。一方で、回答スピードだけを重視すると品質が低下する可能性もあるため、他のKPIとあわせて確認することが重要です。

・平均処理時間(AHT)

平均処理時間(AHT)は、一件の問い合わせ対応にかかった平均時間を示す指標です。

通話時間だけではなく、対応記録の入力や後処理時間も含めて計算されるケースが一般的です。

AHTが短くなれば業務効率の向上が期待できますが、短縮だけを目的にすると十分な対応ができず、顧客満足度の低下につながる恐れもあります。

そのため、応答率や顧客満足度など、ほかのKPIと組み合わせながら総合的に評価しましょう。

・一次解決率(FCR)

一次解決率(FCR)は、最初の問い合わせ対応だけで問題を解決できた割合を示す指標です。

一次解決率が高いほど、顧客は何度も問い合わせる必要がなくなるため、満足度の向上につながります。また、問い合わせ件数そのものを減らせるため、オペレーターの負担軽減にも効果的です。

一方で、一次解決率が低い場合は、対応マニュアルや教育体制に課題がある可能性があります。問い合わせ内容を分析しながら、継続的に改善していくことが重要です。

・放棄呼率

放棄呼率とは、電話がつながる前に顧客が通話を切ってしまった割合を示す指標です。

例えば、100件の着信があり、そのうち20件がオペレーターにつながる前に切れてしまった場合、放棄呼率は20%になります。

放棄呼率が高い場合は、電話がつながるまでの待ち時間が長かったり、人員不足によって十分な対応ができていなかったりする可能性があります。
問い合わせを諦めた顧客は、そのまま商品やサービスの利用をやめてしまうこともあるため、注意が必要です。

応答率とあわせて確認しながら、適切な人員配置やチャットボットなどの導入を検討しましょう。

・顧客満足度(CSAT)

顧客満足度(CSAT)は、問い合わせ対応に対して顧客がどれだけ満足したかを数値化した指標です。

一般的には、「今回の対応に満足しましたか」といったアンケートを実施し、5段階評価や10段階評価で回答してもらいます。

対応件数や処理時間だけでは、顧客が本当に満足しているかは分かりません。対応が早くても説明が不十分であれば、顧客満足度は低下する可能性があります。
業務効率だけではなく、対応品質も維持するためには、CSATを継続的に確認することが重要です。

・NPS®

NPS®(Net Promoter Score)は、顧客ロイヤルティを測定する代表的な指標です。

「この商品やサービスを家族や友人へ勧めたいと思いますか」という質問を行い、その回答結果から算出します。
CSATが現在の満足度を測る指標であるのに対し、NPS®は将来的な継続利用やブランドへの信頼度を把握できる点が特徴です。

一度の問い合わせ対応だけではなく、企業全体への評価にもつながるため、カスタマーサポートだけでなく経営指標として活用する企業も増えています。

・SLA達成率

SLA(Service Level Agreement)とは、企業が顧客に約束したサービス品質を示す基準です。
例えば、「24時間以内に回答する」「電話は30秒以内に応答する」といった目標を設定し、それをどの程度達成できたかを測定します。

SLA達成率を確認することで、サービス品質を一定水準で維持できているか判断できます。
目標を達成できない状態が続く場合は、人員配置や業務フローの見直しが必要になるでしょう。

▼ KPIを改善する方法

KPIは測定するだけでは意味がありません。数値を分析し、改善施策につなげることで初めて効果を発揮します。
ここでは、代表的な改善方法を紹介します。

・FAQやチャットボットを活用する

FAQやチャットボットを活用すると、顧客が自分で疑問を解決しやすくなります。
営業時間や料金、操作方法など、回答内容が決まっている問い合わせは、自動対応へ切り替えることでオペレーターの負担を軽減できます。

また、問い合わせ件数そのものを減らせるため、一次応答時間や応答率の改善も期待できるでしょう。

・オペレーター教育を実施する

対応品質を向上させるためには、オペレーター教育も欠かせません。

商品知識だけではなく、ヒアリング方法や説明方法なども定期的に研修することで、一次解決率の向上につながります。
また、対応品質を統一するためにマニュアルを整備すると、担当者による対応のばらつきを抑えられるでしょう。

・問い合わせ内容を分析する

問い合わせ履歴には、業務改善につながるヒントが数多く含まれています。
同じ質問が繰り返し寄せられている場合は、FAQやWebサイトの説明不足が原因かもしれません。

問い合わせ内容を定期的に分析することで、優先的に改善すべき課題を把握しやすくなります。

・業務フローを見直す

対応手順が複雑だったり、担当部署への引き継ぎが多かったりすると、対応時間が長くなる原因になります。
業務フローを整理し、不要な作業を削減することで、対応時間の短縮や業務効率の向上が期待できます。

改善後も継続的に効果を確認しながら、より効率的な運用を目指しましょう。

・システムを活用する

CRMや問い合わせ管理システムを導入すると、顧客情報や過去の対応履歴を一元管理できます。
担当者が変わっても過去の対応内容をすぐ確認できるため、スムーズな対応が可能になります。

また、問い合わせ件数や応答率なども自動で集計できるため、KPI管理の効率化にも役立つでしょう。

▼ KPIを運用する際のポイント

KPIは設定するだけでは十分な効果を得られません。
継続して運用するためのポイントを紹介します。

・KPIは目的に合わせて設定する

KPIは、自社の課題や目的に合わせて設定することが重要です。

例えば、問い合わせ対応のスピードを改善したい場合と、顧客満足度を向上させたい場合では、重視すべき指標が異なります。

目的を明確にしたうえで、適切なKPIを設定することで、改善もしやすくなるでしょう。

・定期的に見直す

業務内容や顧客ニーズは変化し続けます。
そのため、一度設定したKPIをそのまま使い続けるのではなく、定期的に見直すことも大切です。
運用状況に応じて改善を繰り返すことで、より実態に合った管理ができるようになります。

・複数の指標を組み合わせる

一つのKPIだけでは、業務全体を正しく評価することはできません。

例えば、平均処理時間だけを短縮すると、説明不足によって一次解決率や顧客満足度が低下する可能性があります。
そのため、応答率やFCR、CSATなど複数の指標を組み合わせながら総合的に判断することが重要です。

▼ KPI改善には継続的な分析と改善が重要

KPIは一度改善すれば終わりではありません。
継続的な分析と改善によって、より高い成果につなげられます。

・データを定期的に分析する

KPIは、定期的に確認することが大切です。
数値の推移を継続して分析することで、小さな変化にも気付きやすくなります。
課題を早期に発見できれば、迅速な改善にもつながるでしょう。

・改善施策の効果を検証する

FAQの追加やシステム導入などの施策を実施した後は、その効果を数値で確認することが重要です。
期待した成果が得られているかを確認し、必要に応じて改善方法を見直しましょう。

・PDCAを回し続ける

KPI運用では、PDCAサイクルを継続することが欠かせません。
計画を立て、施策を実施し、その結果を分析して改善する。この流れを繰り返すことで、業務品質や顧客満足度を継続的に向上できます。

▼ まとめ

KPIは、カスタマーサポートの現状を把握し、業務改善につなげるために欠かせない指標です。応答率や一次解決率、顧客満足度などを継続的に確認することで、課題を数値で把握しやすくなります。

また、KPIは測定するだけでは十分ではありません。FAQやチャットボットの活用、オペレーター教育、業務フローの見直しなど、改善施策と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。

自社の目的に合ったKPIを設定し、定期的な分析と改善を繰り返すことで、業務効率と顧客満足度の両立を目指しましょう。



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