企業の電話業務に関わったことがある人であれば、1度は「PBX」というキーワードを聞いたことがあるのではないでしょうか。

PBXには、いくつか種類があります。
それぞれの違いやメリット・デメリットを理解し、自社に適切なものを選ぶことで、費用削減・業務効率化などの効果が得られます。

電話業務を効率化したい人、これからPBXを導入しようとしている人は、ぜひ最後までご覧ください。

PBXとは

PBXとは「Private Branch Exchange」の略で、日本語に訳すと「電話交換機」という意味です。
PBXには外線を内線につなげたり、内線同士をつなげたりする役割があります。
「社内にある小さな電話局」をイメージしていただけると分かりやすいのではないでしょうか。

PBXとは
PBXとは

PBXの基本機能

PBXには5つの基本機能があります。

外線電話の発着信制御

外線からの着信を振り分けられる、「着信制御」と「発信制御」の機能が備わっています。

着信制御とは、かかってきた電話を制御する機能です。
営業部直通の電話番号にかかってきた電話は営業部の内線電話機に、人事部直通の電話番号にかかってきた電話は人事部の内線電話機に、といったように、外線電話をPBXが適切な電話機へ振り分けます。

発信制御とは、かける電話を制御する機能です。
この機能を使うことで、営業部は営業部直通の電話番号から、人事部は人事部直通の電話番号から発信することが可能になります。

外線電話の発着信制御のイメージ
外線電話の発着信制御のイメージ

内線電話同士の通話機能

PBXを介して通話することで、通信料のかからない内線通話ができます。
拠点が複数ある企業でも、各拠点のPBXをつなぐことで内線化することが可能です。
離れた拠点間の通話も、通信料がかからないようにできるというわけです。

代表番号着信機能

代表番号への着信を、指定されたグループの電話機に着信させる機能です。
空いている電話機に着信させたり、番号順に着信させたりと、優先順位を設定することも可能です。
ただし、グループを組む番号は同じ市外局番でなければならないなどの制限があることも、覚えておいてください。

代表番号着信機能のイメージ
代表番号着信機能のイメージ

転送機能

着信した電話を他の電話機に転送する機能です。
固定電話機だけでなく、スマートフォンにも転送できます。
なお転送機能には主に以下6つの種類があります。

不在転送

不在時や忙しくて電話に出られない時に、指定の番号に転送されます。

話中転送

通話中の場合に、指定の番号へ転送されます。

応答遅延転送

所定の呼び出し回数内に応答がない場合に、指定の番号に転送されます。

着信選択転送

設定された条件に合う着信のみ、指定の番号へ転送されます。

圏外転送

スマートフォンを内線化して使用している時、所定のスマートフォンが圏外で使えない場合は、他の電話機に転送されます。

保留転送

通話を一度保留にして、任意の番号に転送します。

パーク保留機能

パーク保留機能とは、保留した通話をどの電話機でも取り次ぎできるようにする機能です。
外線を誰に転送すればいいのか分からなかったときでも、パーク保留機能を使えば、担当者が近くにある電話機から通話を再開させられます。
多くの社員が外線番号を共有している規模の大きな企業では特に、パーク保留機能は有効的です。

パーク保留機能のイメージ
パーク保留機能のイメージ

PBXとビジネスフォンの4つの違い

ここまで読んで、別の記事で紹介した「ビジネスフォン」と何が違うの?と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、PBXとビジネスフォンの4つの違いについてご説明します。

ビジネスフォンについては、以下の記事で詳しく解説しています。
>>ビジネスフォン(ビジネスホン)とは?家庭用電話機との違いって?

接続できる電話の台数

PBXは電話機を数千台まで接続可能です。また、1つのPBXで複数の拠点をまとめて管理することもできます。
ですので、従業員数の多い大規模企業や、複数拠点がある企業でも利用できます。

対してビジネスフォンが接続できる電話機は多くても数百台までです。
したがって、拠点が1つしかない企業や、オフィスが1フロアしかない企業に向いています。

システムの安定性

多くの場合、PBXはシステムが二重で実装されています。したがって仮に片方のシステムでトラブルが発生した場合も、もう一方のシステムが稼働し続けられるようになっており、システムの安定性は高いと言えるでしょう。
また、バッテリーを増設していれば、停電時もおよそ1日は稼働できます。

対してビジネスフォンにはシステムが1つしかないので、トラブルが発生した場合、電話が使えなくなってしまいます。
特に長い年月使用しているものは老朽化している可能性がありますので、注意しましょう。
ビジネスフォンにも停電用のバッテリーを増設することは可能ですが、稼働時間は数時間と短くなっています。

得意分野

PBXは複数拠点・複数フロアのネットワークを一元化できます。
そこで内線通話機能、転送機能、パーク保留機能など、主に内線通話を効率化する目的で利用されます。
またパソコンやスマホなど、外部機器と接続することも可能です。

対してビジネスフォンは、代表組、ダイヤルイン、保留転送など、外線通話に特化した機能が豊富です。

初期費用

ビジネスフォンの導入にかかる初期費用は高くても数百万円ですが、PBXは(規模によりますが)高ければ数千万円の初期費用がかかります。
ただしこの点については、PBXの中でも「クラウドPBX」を利用することで初期費用を抑えることも可能です。(クラウドPBXの詳細は後述します。)

PBX ビジネスフォン
接続できる電話の台数数千台まで可能数百台まで
システムの安定性高いPBXよりは低くなる
得意分野内線通話の効率化外線通話の利便性向上
初期費用高ければ数千万円高くても数百万円

PBXには3種類ある

ビジネスフォンと違い複数の拠点間を内線通話できるPBXは、多数の企業が導入し始めています。
ネックだった初期費用についても、クラウドPBXの登場で導入のハードルは下がってきています。
ここでは、PBXの種類について見ていきましょう。

レガシーPBX

レガシーPBXは従来使用されてきたタイプで、PBXの中では最も古いタイプです。単純にPBXと呼ばれることもあります。
オフィスにPBXを設置して運用します。(オンプレミス型)

レガシーPBXは電話回線を用いて機器同士をつないでいます。
ネットワーク回線を使用しないため、サーバーダウンや停電の影響を受けない点がメリットです。
一方、電話回線を使用するということは、オフィスのレイアウト変更の度に回線工事と工事費が必要になるというデメリットもあります。

以下の条件に当てはまる企業には、レガシーPBXがオススメです。

  • すでにオフィスに電話回線が敷かれている
  • フロア・拠点が1つしかない
  • 電話回線を利用した高品質な通話を求めている
  • 費用をかけてでも、セキュリティ性や稼働の安定性を確保したい

IP-PBX

IP-PBXとはInternet Protocol PBXの略で、電話回線ではなくIPネットワークを利用したPBXのことです。
電話回線ではなく、LANケーブルで機器同士を接続します。
IP-PBXにはハードウェアタイプと、ソフトウェアタイプの2種類があります。

ハードウェアタイプは、オフィスにPBXを設置するタイプです。
機器やネットワークを自社内で管理できるので、セキュリティの高さや稼働の安定性がメリットです。
しかし機器を設置するためレガシーPBX同様レイアウト変更に手間や費用がかかったり、容量や機能を増やす際は追加の機器や新しい機器を設置したりする必要があります。

ソフトウェアタイプは、サーバーにインストールするタイプです。
工事や機器が不要な分、ハードウェアタイプに比べて費用を抑えられます
利用者増加や機能追加も比較的簡単に行え、拡張性が高いのもメリットです。
また、ソフトウェアをアップデートすることでメンテナンスも容易に実行できます。
しかしネットワークを利用する以上、情報漏えいやハッキングなどのセキュリティリスクはハードウェアタイプに比べて高くなります。

以下の条件に当てはまる企業には、IP-PBXがオススメです。

  • IP電話を利用することで通話料を下げたい
  • パソコンと電話を連携したい
  • CTIを利用したい
  • スマートフォンを内線化したい
  • 拠点が複数ある、またはフロアが複数階にまたがる

クラウドPBX

クラウドPBXとは、クラウド上のサービスを利用するPBXで、3種類の中で最も新しいタイプです。
クラウドPBXは機器も工事も不要のため、導入にかかる費用と期間を大幅に削減できます。
メンテナンスもサービス提供者が行うので、運用にかかる費用と手間を削減できることもメリットです。

クラウドPBXとは
クラウドPBXとは

他にも以下のメリットがあります。

  • インターネットが使える場所であればどこでも利用できる
  • オフィス移転の際も番号が変わらない
  • 設定変更や回線増減が管理画面上で完結する

しかし、まったくデメリットがないわけではありません。
クラウドPBXにも以下のようなデメリットがあります。

  • レガシーPBXやIP-PBXと違い、月額利用料が発生する
  • 通話音質がインターネット回線によって左右されるので、安定しない場合がある
  • 「110」や「119」などの特殊番号にかけられない

上記のことから、以下の条件に当てはまる企業には、クラウドPBXがオススメです。

  • 設定変更や回線増減の頻度が高い
  • 会社を立ち上げたばかりで、電話の利用コストや運用負担を最小限にしたい
  • PBXやハードウェア機器が老朽化しており、入れ替えを検討している

クラウドPBXにはデメリットも存在しますが、日々進化を遂げており、デメリットを克服したサービスも出てきています。
何より初期費用を抑えられるメリットや便利な機能を考慮すると、今後クラウドPBXを利用する企業は一層増えるでしょう。

PBXの選び方

ここからは上記で紹介した3種類のPBXの中からどのPBXを選ぶべきか、4つの視点で見ていきます。

コスト

初期費用を抑えるなら、クラウドPBXがおすすめです。機器が不要なので導入費用を抑えられます。
ランニングコストを抑えるなら、ソフトウェアタイプのIP-PBXクラウドPBXがおすすめです。

レガシーPBXやハードウェアタイプのIP-PBXではメンテナンス費用がかかります。
クラウドPBXはメンテナンス不要の代わりに月額利用料がかかりますが、よほどの大企業でない限り、メンテナンス費用よりは安く済むでしょう。
ただしクラウドPBXの月額利用料は利用人数に比例することがほとんどですので、社員数が多い企業の場合は事前にシミュレーションしておいた方が良いかもしれません。

工事の有無

クラウドPBXはオフィス内にPBXを設置する必要はありません。
また電話回線を使わないので、配線工事も不要となります。

対してレガシーPBXやハードウェアタイプのIP-PBXはオフィス内にPBXを設置する必要があります。
ソフトウェアタイプのIP-PBXも、サーバーや専用機器の設置が必要です。
そのため機能を拡大・追加したり、レイアウト変更や移転したりする際は、機器の導入・設置・入れ替えなどの工事が必要となります。
工事には時間も費用も手間もかかるので、できるだけこれらを削減したいのであれば、クラウドPBXがおすすめです。

社員の所在地

拠点やフロアが複数あったりテレワークの社員が多かったりする企業には、クラウドPBXがおすすめです。

クラウドPBXなら、以下のように場所を問わずに利用できるからです。

  • 社外にいる人と社内にいる人が内線通話できる
  • スマートフォンで会社の電話番号を使って発着信できる
  • 会社にかかってきた電話を社外にいる社員に転送できる

セキュリティ面・安全性

セキュリティ面・安全性を考えるなら、レガシーPBXがおすすめです。
インターネット回線を使用しないので、情報漏えいやハッキングなどのリスクがIP-PBXやクラウドPBXよりも少ないからです。

まとめるとセキュリティ面・安全性はレガシーPBXが優れていますが、その他の点についてはクラウドPBXがおすすめとなります。
ですのでセキュリティ面とその他の点を天秤にかけ、「何よりもセキュリティ面を重視したい」という場合はレガシーPBXを、それ以外のほとんどの場合はクラウドPBXを導入すると良いでしょう。

● コスト:クラウドPBXがコストを抑えられる
● 工事の有無:クラウドPBXなら工事不要
● 社員の所在地:クラウドPBXは場所を問わずに利用できる
● セキュリティ面・安全性:レガシーPBXは情報漏えいやハッキングのリスクが少ない

クラウドPBXが向いている企業

クラウドPBXはほとんどの企業で便利に使えるものですが、とくに以下3つのケースにはクラウドPBXがおすすめです。

拠点が多い企業

拠点が多い企業は、クラウドPBXに向いています。通話料が削減でき、さらに業務効率が高まるからです。

例えば異なる拠点を持つ企業は、これまでは下記の課題がありました。

  • 他の拠点の社員との通話に、通話料がかかっていた(外線通話であったため)
  • 本社にかかってきた電話が他の拠点や社外の担当者宛てだった場合、一度電話を切って担当者から折り返し電話していた=取り次ぎに手間と時間がかかる上、電話をかけてきた人にとっても時間がかかったり折り返しの電話を待たねばならなかったりと煩雑だった

それがクラウドPBXを導入することで、以下のように解決できます。

  • 他の拠点の社員と内線通話できるようになり、通話料が減少した
  • 他の拠点や社外の担当者に通話を転送できるようになったため、取り次ぎ業務が簡略化され、電話をかけてきた人の手間も解消された

海外拠点がある企業

クラウドPBXで通話料を削減したり業務効率化したりできるのは、国内拠点だけではありません。
海外拠点でも、国内拠点と同じメリットを受けられます。
とくに回線や機能の追加を管理画面上でできるという点は、海外拠点においては大きなメリットとなるでしょう。
わざわざ現地に行って機器を設置する必要がありません。

さらにクラウドPBXを利用すると、国際電話の通話料が割安になる場合もあります。
海外のお客さまと電話でやり取りする機会が多い企業にとっては、通話料を大幅に削減できるでしょう。

内線電話を多く利用する企業

内線電話を多用する企業は、クラウドPBXを利用することで通話料が大幅に下げられ業務効率が高まります

例えば、以下のような企業では、内線通話を多用するのではないでしょうか。

  • テレワークしている社員が多い企業
  • チェーン展開する飲食店
  • ホテル
  • 病院や介護施設

まとめ:新たに導入するならクラウドPBXがおすすめ!

ひと言でPBXと言っても、いくつか種類があることがお分かりいただけたでしょうか。

中でもクラウドPBXが、多くの企業にとって最もメリットとデメリットのバランスが取れているといえます。
初期費用を抑えながら、企業の規模に合わせて柔軟に設定できたり、テレワークの環境に適応しやすかったりと、これからの時代にマッチしているからです。

内線電話を効率化させるには、クラウドPBXの導入をおすすめします。
また外線電話の効率化には、コールセンターサービスの利用も併せてご検討ください。

外線電話の効率化にはコールセンターサービス!

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