IT・WEBサービスサポート業務の最も重要な「顧客の抱えるトラブル、疑問を速やかに解決」するミッションを限られた人員と時間で達成するには業務の効率化は欠かせません。
業務の効率化はあらゆる業務において必要とされていますが、IT・WEBサポートは解決までのスピードが重要であることから他の業務よりも効率化を目指すことが必要です。
効率化を実現するために必要なノウハウとテクニックに関する基本的な考え方について紹介します。
IT・WEBサービスサポートを効率化する基本は「ムダ・ムリ・ムラ」の削減
トヨタ自動車が業界で世界トップのリーディング企業になれた理由の1つは、徹底的に「ムダ・ムリ・ムラ」を省いた「トヨタ生産方式」であることがよく知られています。
トヨタ自動車は、生産部門において「ムダ・ムリ・ムラ」の徹底的な削減に取り組み成功しましたが、事務部門においても生産部門と同様に「ムダ・ムリ・ムラ」を省くことで効率化による生産性の向上を実現できます。
なお、生産部門は、生産性を示す指標が定量的に把握できるため、何をなすべきかが比較的分かりやすいこと、および機械や人間が行う作業時間に数倍もの大きな差が出ないことからか企業の生産性の差も極端に大きくはありません。
例えば、トヨタ自動車が他の自動車メーカーと比べて、1台の車のコストや1時間で生産できる台数に数倍の差はありません。
しかし、事務部門の生産性を示す明確な指標はなく生産性を上げるための取り組みが分かりにくいこと、また、例えばエクセルで関数を組み合わせて使えば短時間にできる人もいれば、関数をまったく使用しないで処理する人では処理時間に数倍以上の差が生じます。
このように事務部門では生産部門より効率化が遅れていること、効率化を徹底すれば、生産部門とは比較にならないほど大きな効率化を実現できることを、まずよく理解して「ムダ・ムリ・ムラ」の削減に取り組む姿勢を強く持つことが重要です。
IT・WEBサポートの「ムダ・ムリ・ムラ」をなくす考え方・手法
1.「ムダ・ムリ・ムラ」とは
「ムダ・ムリ・ムラ」をなくすためには、「ムダ」「ムリ」「ムラ」とは何かを知ることが必要です。
「ムダ」とは、目的を達成するために不必要あるいは貢献しない作業のことです。
例えば、部門全体で利用する書類やデータの保存場所を一カ所に決めていない、決めていても検索しやすいルールが定められていないため、必要な書類やデータを探すのに余分にかかる時間はムダです。
そのほかにも、
- 業務処理手順が明確に定められていないため、どのように処理してよいか迷う時間のムダ
- 不必要なことまで書かねばならないことが手順として決められているために余分な時間のかかるムダ
- ベテラン社員の業務に関するノウハウが部門の全員に共有されていないために生じるムダ
が多くあります。
「ムリ」とは、能力以上のことを頑張って1人でやろうとして作業の効率を落とすこと、あるいは能力的に処理はできても時間あたりに処理できる件数以上を処理させることでオーバーヒートして、かえって効率が低下することです。
なお、機械ではない人間は、難しいことを経験することでスキルアップが可能です。
そのため、計画的に教育訓練として一時的に生産性を落とすことは問題ではありません。
ただし、教育訓練の結果は測定して、スキルアップの程度を確認して作業を行わせないと、同じようにムリが生じるので注意が必要です。
「ムラ」とは、ムダやムリなどが生じた結果、あるいは適正な処理の基準や方法が標準化されていないために必要以上に時間をかけたり、逆に簡単な処理ですませたりした結果、必要なレベルの事務処理の品質や処理時間にバラツキが生じることです。
2.「ムダ・ムリ・ムラ」をなくす手順
2-1.現状把握と分析
「ムダ・ムリ・ムラ」をなくすためには、現状の業務が特に問題なく行えていても必ずどこかに「ムダ・ムリ・ムラ」があると認識して、それを前提に、業務の現状を把握し、原因を全員で洗い出して具体的な内容に可視化します。
次に、可視化できた「ムダ・ムリ・ムラ」に対して、以下の視点から見直しを行います。
2-1-1.思い切ってやめること、あるいは省略・簡素化することは不可能なのか?
効率化のために行う最も基本的な考え方です。
やめるのは問題があると思えても、やめることで起きる問題を別の方法で処理することを考えると、現状より効率化できる可能性があります。
2-1-2.ツールを利用して自動処理、あるいは処理時間を短縮させられないのか?
個人の頭の中にあるノウハウを可視化して、簡単に共有できるツールを導入するなど、初期投資が必要になりますが、まずは費用を無視して検討することで、ツールを利用しなくても改善できる方法を見つけられる可能性があります。
2-2.業務効率化のための計画立案
何を、いつまでに、どのようにするか、目標(KPIの設定)と優先順位を定めて、担当者をアサインして計画を立案します。
2-3 実行と効果の測定とPDCAの実施
効率化案を実施し、その効果を測定し、PDCAサイクルを回して改良して、より効率化できるようにします。
まとめ
IT・WEBサービスサポートの効率化を実現するために必要な基本的な考え方である「ムダ・ムリ・ムラ」とは何か、そして必ずある「ムダ・ムリ・ムラ」を見つけるためにはどうすればよいか、および効率化するための方法について紹介しました。
それぞれのIT・WEBサービス部門に求められるサポートの具体的なノウハウやテクニックは、この「ムダ・ムリ・ムラ」をなくす過程で生み出せます。
インターネットで検索すれば、ノウハウやテクニックとしていくつも紹介してありますが、それらを使っても小手先の効率化に終わってしまって、大きな効果が得られない可能性があります。
「ムダ・ムリ・ムラ」を徹底的に洗い出して、それを解決することに知恵を絞らなければ本当に役に立って、効果の大きなノウハウ・テクニックは身に付きません。