近年の経営環境の厳しい時代においては、自社顧客との接点となり顧客満足度を上げるうえで重要な部門であるコールセンターも
人件費や、機材・電話回線など設備投資費用のコスト削減を行い、
経営体質をスリム化し、経営の効率をあげること
は各企業にとって重要なテーマになっています。
経営体質のスリム化や経営効率化の1つの手段としてアウトソーシングという手法があります。
コールセンターとしての業務の質を落とさずに自社で行っていた業務をアウトソーシングできると、結果として得られた「ヒト、モノ、カネ」の経営資源をコア事業に重点投資することで他社競争力を確保し、企業成長を促進できます。
そこで、コールセンターの業務を自社から外部に委託するアウトソーシングのメリット・デメリット、注意点、費用について解説します。
コールセンター業務のアウトソーシングとは
コールセンター業務のアウトソーシングとは、自社で運営している “コールセンターの顧客との電話対応業務” をそのまま外部の専門業者に委託することです。
アウトソーシングが始まった初期は、経理・税務の記帳処理や給与計算、あるいは工場の組み立て作業や設備のメンテナンスなどの定型業務、かつ外部の専門家に任せたほうが、コストが安く、一定の品質が保てる業務で利用されていました。
しかし、景気の低迷などによって多くの業界で競争が激化しています。
競争を勝ち抜き、生き残って成長を続けるには、より経営の効率化・スリム化が求められ、「ヒト、モノ、カネ」の経営資源を、より重要なコア事業に重点投資しなければならなくなりました。
そのため、近年、各企業は定型業務だけでなく、より広範な業務についてアウトソーシングを始めています。
アウトソーシングにより、業務処理のスピード・品質の向上、および担当していた社員の再配置によって高い付加価値を生みだせるコア業務へのシフトの実現、モノやカネの有効利用などによって経営の効率化・質の強化を実現し、企業競争力の向上を図ろうとしています。
コールセンター業務のなかでも高い専門知識が必要なIT・WEBサービス・サポート業務もアウトソーシングする企業が増加し、経営に大きなメリットをもたらしています。
コールセンター業務をアウトソーシングするメリット・デメリット
1.メリット
アウトソーシングを活用することで主に以下のメリットを得られます。
1-1.企業競争力を強化でき、経営を安定させられる
アウトソーシングによって生じた「ヒト、モノ、カネ」の経営資源をコア事業にシフトすることによって企業競争力を強化できます。
また、アウトソーシングすることで人件費や設備投資費用など経営資源を抑え、経営体質を筋肉質にできることから損益分岐点が下がり、経営環境の変化の激しい時代であっても経営を安定させられます。
1-2.業務の効率・スピード・品質を向上させられる
アウトソーシングすることで外部の専門知識を有する人材を活用でき、自社で行うよりも業務の効率・スピード・品質を向上させられます。
また、アウトソーシングを委託する企業が経験豊富な場合、自社にない業務処理スキルを有している人材が存在し、より効率的な業務処理や多角的な視点を持った質の高い業務が期待できます。
ただし、業務の内容によっては、効果が現れるまで時間がかかったり、効果が小さかったりする可能性があります
1-3.組織の肥大化を防げる
組織は常に自己増殖し肥大化する傾向を持っています。
組織の長が、優秀であれば仕事の範囲をどんどん広げていくことから仕事が増え、部下が増えて組織が肥大します。
無能な長であれば、仕事ができないので部下を多く集めて仕事を進めようとすることから、組織は肥大します。
その点アウトソーシングはまた、コスト削減、固定費を変動費化でき、企業規模や業務量の増減に合わせてムダの少ない経営が可能です。
1-4.高い専門性の確保
自社に専門性の高いスキルを持った人材が少ない場合や、教育・研修に時間がかかる場合、アウトソーシングすることで高い専門性を持った人材をスピーディーに確保できます。
2.デメリット
アウトソーシングを活用することで主に以下のデメリットが生じることが考えられます。
アウトソーシングを行うときは十分な注意が必要です。
2-1.情報漏洩のリスクがある
業務によっては、社外に漏れては困る情報が漏れるリスクが生じます。
また、アウトソーシングした企業から、その企業を通じて別の企業へ情報が漏洩するリスクがあります。
そのため、事前にアウトソーシングする企業の調査やセキュリティチェック、契約書にペナルティ条項を盛り込むなどの対策が必要です。
2-2.社内ノウハウが蓄積されずガバナンスも低下する
アウトソーシングすることで、その業務に関する新しいノウハウが社内に残らず、何らかの事情で委託業務を引き上げ、社内で行うときに効率が低下するリスクが生じます。
また、業務を委託し、任せることで効率アップが期待できますが、業務全体を把握するコーポレートガバナンス(企業統治)が弱体化するリスクが生じます。
一部分の業務であっても企業経営に悪影響を与える要因の把握が後れたり、気づけなかったりする可能性が生じます。
2-3.余剰社員の発生、モラルダウンのリスクが生じる
アウトソーシングした業務を担当していた自社の社員の能力を生かせる配置転換を行わないと余剰人員が発生したり、就業意欲に対するモラルダウンが起きたりして効率が低下するリスクが生じます。
2-4.コスト削減効果が期待できない可能性がある
アウトソーシングもやり方によっては、コスト削減効果が期待できません。
例えば、業務処理フローを考慮しないで単純に業務全体をアウトソーシングすると業務処理がスムーズに進まなかったり、業務の一部が社内に残ったりしてコストや処理スピードが遅くなって非効率になりコストが上昇する可能性があります。
コールセンター業務をアウトソーシングするときの注意点
コールセンターの業務は、自社の顧客の満足度を上げるために重要な役割を果たすため、アウトソーシングする場合には十分な注意を払う必要があります。
一般的な注意点として、アウトソーシングのデメリットに対して万全の対策を採ることに加えて、コールセンター業務のアウトソーシングに特有の注意点として下記があります。
- 顧客満足度を上げ、測定できる指標を明確にする
- 自社の顧客対応ポリシーを完全にアウトソーシング先の担当者に伝える
- 自社に蓄積されている顧客対応ノウハウをアウトソーシング先の企業に残らず伝えられるようにする
- アウトソーシング先の企業が新たに得たノウハウや顧客情報を速やかに吸い上げ、共有できるシステムを構築する
- クレーム対応が遅くならないようにクレームの報告ルールや処理の分担ルールを明確にする
コールセンター業務のアウトソーシング費用について
従量課金型と月額固定型があります。
一般的には電話のみで業務が完了する業務は従量課金型が適しており、即答できず折り返し電話するような業務では月額固定型が適しています。
見積もりを依頼する場合は、自社で対応しているときに問い合わせの多い内容、対応方法、対応時間、対応人数などを明確にして、自社での費用を先に算定しておきます。
また、見積もりとともに、アウトソーシング先企業の情報共有やセキュリティシステムの内容・意識、実績・信頼性、および担当者のスキルチェックをあらゆる角度から検討を加えます。
これらと最終的な見積価格を比較して決定します。
まとめ:積極的なアウトソーシングが必要な時代
コールセンター業務のアウトソーシングを行っている企業が増加しています。
アウトソーシングは、厳しい経営環境下で企業競争力を効果的に高める手段として利用できます。
自社のコア事業へ経営資源を集中し、市場の変化が激しく、グローバルな競争が激化している時代を乗り切るためには積極的なアウトソーシングの導入の検討が求められています。